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[?]地域におけるありふれた問題・疾患に対する対処・治療法の実態調査、ならびにそれらの問題の効果的な解決方法の検討


岡山雅信  自治医科大学地域医療学
梶井英治  自治医科大学地域医療学、三瀬順一  自治医科大学地域医療学、
濱崎圭三  自治医科大学地域医療学、橋本淳  自治医科大学地域医療学、
奥野正孝  神島診療所、佐々木将人  狩江診療所、高木史江  東京大学大学院国際保健専攻国際地域保健、
八森淳  国保百石病院内科、井上陽介 春日村診療所、村上智彦 藤沢町民病院内科

?.はじめに
 老人人口が増加し、ありふれた問題・疾患に対する対処・治療の重要性は増している。地域医療現場において、実際に行われている対処・治療法が有効なのかどうかの検討は、症例数が少ないなどから、難しいのが現状であろう。多施設で症例数を集め、対処・治療法の評価に最も適した研究デザインであるランダム化比較試験を実施し、その評価を行ったとしても、個別のケースヘの適応には限界がある1)。地域医療現場においては、ありふれた病気に接することが多く、そのうち、便秘や不眠といった対症的な治療を行う疾患の割合は高い2),3)。これらの対処にはより個別な対応の必要が予想される。また、このことは診療を行う上で非常に重要である。しかし、便秘や不眠において医師がどのような対処や判断を行っているのかについて詳しい調査は行われていない。
 個々の患者の問題の対処・治療法を解決できる研究デザイン、N-of-1 trialが報告された4)。N-of-1 trialは、異なる治療法をランダムに実施順序を決めて、一人の患者に実施した結果から、患者毎にどちらの治療法が有効であるかどうかを検討する方法であり、便秘や不眠といった慢性的症状に対する対処・治療法の有効性の評価に適している1),4)
 そこで、不眠と便秘において医師がどのような対処や判断を行っているか、また、不眠に対してN-of-1 trialを試み、日常臨床において実施し得るかどうかを検討した。
?.方法
A.不眠と便秘における医師の対処及び判断
 任意に抽出した外来診療を行っている医師19人に対して、平成10年10月から11月にかけて、ロング・インタビュー調査を行った。調査の内容は、便秘および不眠について、(1)問診、身体所見、検査、処方、教育についてどのような患者にどのように行っているか、(2)これらの項目について、患者と意見の不一致がなかったかどうか、またその時どのように対応したか、(3)いつ頃、処方行動が決まったか、(4)卒後年数、勤務場所、卒後初期研修形式、であった。

 

 

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