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[?] 地域住民を対象とした下肢の閉塞性動脈硬化性病変に関する研究
     ―硬化性病変の重症度と下肢血流量の比較検討―


谷口信行   自治医科大学臨床病理学教室
伊東紘一   自治医科大学臨床病理学教室
川井夫規子  自治医科大学臨床病理学教室
尾本きよか  自治医科大学臨床病理学教室
川本龍一   愛媛県町立野村病院内科

?.はじめに
 近年食生活の変化にともない、高血圧、コレステロール値の上昇、糖尿病の増加など、血管の病変特に動脈硬化性病変の増加がいわれている。これらの傾向は全国的なものであり、都市およびへき地にかかわりなくおこっている。しかし、これらの疾患が年齢との関係が深いために高齢化の進むへき地では、都市部よりもその重要性が高いと考えられる。
 ところが、これらの病変は無症状のうちに進行するため、最終的な結果である血管の閉塞あるいは強度の狭窄により末梢側の虚血症状が発現するまで発見できないという問題点があるだけでなく、これまで早期の発見・評価に適当な方法はなかった。
 臨床症状に基づかない動脈硬化の評価法としては、これまでX線的に石灰化を検出する方法、CTを用いて血栓の厚さを計測する手法などがあるが、被爆も含めた侵襲的な点および診断精度に問題があった。また非侵襲的な脈波速度の測定は、血管の硬化性変化との関係はあるが血流自体を評価するものでなく、進行した血管性病変の評価には適当とは言えない。
 最近では、超音波を用いた動脈硬化の判定が行われ始めており、とくに頚動脈は比較的体浅部にあり、明瞭な画像をえられるため、血管壁のなかで中膜と内膜をまとめて計測しその厚さと動脈硬化の指標として使用されている1)。超音波を用いたもう一つの評価法として考えられるのは、その血管を流れる血流量の計測である。この手法については、既に頚動脈血流量、門脈流量などについてすでに報告されている。しかし、これまでの手法には測定部位がかぎられている、精度が悪いなどようにそれぞれ欠点があり、体内の血管に広く使えるというものではなかった。そこで、この研究の目的は、超音波カラードプラ法を用いて血流量を計測することおよび下肢の血流への応用を試み動脈硬化性病変との検討を行う。

 

 

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