[?]拡張型心筋症の家族調査と関連遺伝子の解析
池田 宇一 自治医科大学循環器内科
林 裕次 栃木県石橋病院
石橋 正二郎 茨城県立中央病院
井原 達哉 茨城県清水丘診療所
高橋 将文 宮城県花山村国保診療所
新保 昌久 自治医科大学循環器内科
前田 喜一 愛知県東栄病院
島田 和幸 自治医科大学循環器内科
? はじめに
神経筋疾患による心臓合併症としては進行性筋ジストロフィー(Duchenne型、Becker型)よる二次性心筋症がよく知られている。一般に進行性筋ジストロフィーでは伝導障害はまれで、拡張型心筋症を呈する心収縮障害が多い(1-3,4)。一方、筋緊張性ジストロフィー(myotonic dystrophy;DM)の心臓合併症は主に伝導障害と頻脈性不整脈であるされており(5,6-9)、DMにおける心収縮能・拡張能については一定の見解は得られていない(5,10)。骨格筋のミオトニアに相当する現象が心筋にも存在すれば拡張障害を呈する可能性がある。
最近、ポジショナルクローニングにより第19染色体長腕19q13.3に存在するDMの原因遺伝子が単離された(11,12)。コードする蛋白質は、その相補的DNAから予想されるアミノ酸配列からミオトニンプロテインキナーゼ(myotonin proteinkinase;MtPK)と呼ばれるリン酸化酵素であることが判明した。MtPKはcAMP依存性セリン/スレオニン蛋白リン酸化酵素とされている(13,14)が、基質・局在などの生理機能についての詳細は解明されていない(15,16)。この3'非翻訳領域にはシトシンーチミンーグアニン(CTG)の三塩基反復配列があり、正常者ではその繰り返しが5〜37であるのに対し、患者では50以上、多いものでは数千に達する。すなわちこのCTG三塩基反復配列の伸長の増加がこの疾患の原因であると考えられている(11,12)。本研究の目的はDM患者で、CTG反復配列とこれらの心筋病変に関係があるか明らかにすることである。
? 方法
1.対象患者
DM患者18名(男8名、女10名、平均年齢は41±10歳)を対象とした。DMは神経学的所見、筋電図、筋生検所見、およびDNA解析より診断した。全ての患者が神経筋症状を有する青年・成人発症の古典型であり、同一家系に属する患者はいなかった。
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