自ら答えを見つけていくプロセスの援助
お二人の先生の長年の経験と最新の研究に基づいた非常に興味深い,日常のケアに参考になるお話が続き,またたくうちに時間がすぎ,時間不足を感じる2日間であった。2日目の午前中には,7〜8人のグループに分かれての事例検討も行われた。症状緩和の実際,今後の治療方針決定のためのコミュニケーションのとり方,また複雑な家族関係のある事例に対して,緩和ケアチームはどこまで,どんなふうに関わればよいのかなどを,グループディスカッションを通して学ぶことができた。特に意見の不一致や感情のずれがある場合,正解を出すことは難しく,患者と家族の思いの橋渡しをし,彼ら自身が答えを見つけていくプロセスを援助していくことが専門家の役割であることが再確認された。この事例検討を通して示されたお二人の先生のリーダーシップはまさにその役割を演じておられたように感じた。
最後に,参加者から全人的ケアにおいては霊的ケアが欠かせないのではという質問が出されたが,ダンロップ先生は,「霊的ケアは,患者さん,ご家族,そのお一人お一人を大切な価値ある存在として認めること。そしてその方々が,自分の人生を自分自身でコントロールできるよう援助していくことから始まるのではないか」と,短い中に深い意味を込めてまとめの言葉とされた。そして,最後に「緩和ケアは,今,参加者の皆さんが関わっている方々のためだけでなく,広く医学全般に関わる人々のためにあるものであることを忘れないでください」と,緩和ケアに携わる者へ熱いメッセージを残された。
報告/ピースハウスホスピス教育研究所 松島たつ子

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