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4.振動法(オッシロメトリック法)

 振動法については先に測定の項で簡単に触れておいたが,この方法では非観血的に平均血圧を知ることができると同時に,最近では振動のパターンから収縮期圧と拡張期圧も測定されるようになっている。血圧の測定においては,K音が聴取される以前に水銀血圧計の水銀柱やアネロイド血圧計の針が振動するのが認められる。このような場合には測定を容易にするために振動を最小限にするよう工夫されていることは先にも述べたが,振動法ではむしろこのような振動を鋭敏にとらえて,振動パターンの解析に適するよう工夫がなされている。
 振動のパターンを克明に観察すると,振動が増幅される過程で振幅が急速に増大する点と,振動の減衰の過程では逆に急速に振幅が現象する点が識別されるが,これらの変化をコンピュータで解析して収縮期圧と拡張期圧が決められている。いずれの点をとるかの基準は,機器メーカーの任意の決定によっており,結局は聴診法の測定値と一致するように作られている。この方法の特徴は,体のどの部位でも拍動の触れるところであれば血圧の測定が可能なことと,音の測定ではないので雑音による測定上のエラーは考えなくてもよい。しかし,測定の基準はあくまでもK音法に近似な値が得られるよう経験的に決められていることから,血圧値としては間接的な意味をもつに過ぎない。

F 血圧測定法の教育

 最近は医療担当者以外のひとたちも血圧を測るようになってきているので,単に概念的に測定法を教えるのではなく,正しい測定の技術を実地に指導する必要がある。そのためには,スライドやビデオなどの教育資源を使って十分納得のいく方法で行うのがよい。双子聴診器を使う方法はもっとも簡単で,しかも有効である(図53)。また,K音のシミュレーションを使えば,分析的に聴診する能力を高めることができる。測定技術は1回教えればそれでよいというのではなく,その後1週間の測定値を記録させ,不確かなところがないように完全にマスターさせる。いろいろと教育しても,正しく測れない人には血圧測定をさせないようにすべきである。

図55双子聴診器による血圧測定の指導


 

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