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 ところで,動脈の内圧,すなわち血圧(P)は,オームの法則によって,血圧(P)=〔心拍出量(CO)×抵抗(R)〕で表現される。血流量は,通常,心拍出量で表し,これは1分間に心臓が末梢へ送り出すことができる量で,1回に心臓から出る血液量(SV)と心拍数(HR)を掛け合わせたものである。従って,この関係は次のように書き直すことができる。
  P=SV×HR×R
 実際の生体では,これらの因子が種々の活動状況に応じてダイナミックに変化するので,そのためにはいろいろな制御機構が必要になる。それらの中でもっともよく知られている機序は,局所の代謝に依存した反応と,動脈内の状態や,代謝の状態を感受する受容機構である。後者の神経性の機序には,たとえば動脈内の圧が高くなるとそれを下げるように,また,低くなるとそれを上げるように作動する調圧反射と,さらに動脈血のいろいろな代謝産物が増してくると,それを排泄するように作動する化学反応がある。
 これらの中で,圧受容体は,血液の状態を感受し,また,化学受容体は,pHや酸素張力,あるいは炭酸ガスの張力を感受する。したがって,化学受容体反射では,血液が酸性になってくると,中枢神経を介して血圧を上昇させ,そして循環をよくするほかに,呼吸に対しても非常に大きな影響をもち,pHやpO2が下がって,pCO2が上がってくると,換気が盛んになって,肺を流れる血液の酸素化が進む。
 圧受容体反射では,動脈内圧が高くなると,血管内の圧受容体を介して延髄の血圧中枢の機能が抑えられ,それによって徐脈と細動脈の緊張の抑制による血圧低下が生じる。これらの調節機序によって循環動態は生体の活動に応じて制御されている。

 

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