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図9 心血管系の血液の配分


 これをさらに生体に近づけてみると,図9に示すような閉鎖循環の模式図となる。この図で重要なことは,体の大きい小さいがあるとしても,血液の分布の状態で循環している血液量が安静時でおおよそ5〜6?くらいとすると,それが縦の循環構造の中で均等に分布しているわけではなく,どこかに片寄って存在しているところに大きな意味がある。すなわち,この図から明らかなように,循環血液量の70%は,血液貯留槽である静脈系に存在し,ここに貯えられた血液が種々の行動のさい需要に応じて放出される。つまり,これだけの余裕がないと,いろいろな行動のさいにうまく適合することができない。従って,静脈系に70%,心臓の中に15%,そして動脈系の中にはなんと全体の10%に相当する血液しか存在せず,あと残りの5%は実際の代謝に関与する毛細管の中にある。血圧に関するさまざまの現象を理解する上で,このことはたいへん重要で,たとえば起立性の低血圧では,この静脈槽の壁の緊張が弱いので,立ち上がることによってこの部分への血液貯留が増して,心臓や静脈系内の血液量が減り,とくに体の中でもっとも高い位置にある脳の灌流が著しく低下して脳貧血を起こすことになる。

 

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