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おわりに

 英国の新聞記事を紹介して私の話を終わりにしたいと思います。緩和ケアの一つの学習になると思います。
 マクニー警察長官がカナダに行ってカナダの警察所長を集めて講演をしました。警察官の採用試験です。
 「パトロールをしていたら,近所で爆発がおきました。大きな穴があきました。ひっくり返ったトラックがありました。のぞいてみたらお酒の臭いがして男女2人がケガをしていました。運転をしていた人が無免許だということがわかって,女性は他人の奥さんだったのです。通りかかった人が,助けることがありますかと聞いてきた。その人は銀行強盗だということがわかった。その時,近所の家から男の人が飛び出してきて,奥さんの陣痛が始まったという。その傍に運河があって爆風で飛ばされた人はそこに落ちたが,泳げない,おぼれそうだと助けを求めている。こういう状況の中で警察官だったら何をすべきなのか短く記述せよ」という問題だったそうです。
優秀だと思われていた警察官が何と答えたのでしょうか。「制服を脱いで群集と交われ」と。つまり,緩和ケアでも何もできない状況があるのだと。みんなと楽しむことだけができることかもしれないということです。ストレスのマネジメントです。
 これで2日間にわたってみなさんとお話ししたホスピス国際ワークショップ「チームケアと教育プログラム―セント・クリストファーズ・ホスピスに学ぶ」を終わります。日本のみなさんの少し先を歩む私たちの日常的な体験とそれに対処した方法を率直にお話ししましたが,いくぶんでもお役に立つことがあればとても幸せです。

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