医師向けの教育
医師向けの学部の教育についてまず取り上げたいと思います。とくに医学教育はこれもあれもと目白押しですから,優先順位をつけなければなりません。関連するものがいくつかあるのですが,英国ではコアカリキュラムと呼ばれる緩和医学のカリキュラムがあります。身体的な面と併せて,心理・社会,宗教,文化,倫理,チームワーク,組織,管理・監査などを教育することです。
英国でいま欠けているのは,医学部で具体的な緩和医学を教えていないということです。私たちがどうしたらいいかと思っているのは,いまあるコースの一部を医師向けに工夫をするか,あるいはまったく別個に医師用のものをやるのかということです。つまり,たとえば2週間つづけて緩和ケア教育をするか,それとも外科,内科,耳鼻科のところに緩和ケアのコンセプトを入れていくのかということです。いまのところコンセンサスとしてはその両方のアプローチをまぜたものがいいのではないかといわれています。たとえばコミュニケーションの訓練でも緩和ケアと連繋させながら,緩和ケアにおけるコミュニケーションについても触れていくということです。倫理という問題も緩和ケアだけではなくすべてのヘルスケアにいえることですから,この問題もほかのグループといろいろな教育をする中に入れていくということです。
それと同時に,医学生にはホスピスの経験を必ずしてもらう必要があります。医師になって時にはホスピスに患者さんを紹介する立場になる人ですから,紹介するところがどういうところかを知ってもらう必要があるからです。そのほか,意識をどう教育するのか,心構えはどうするのかということについてはプロジェクトを組んでやるのがいちばんいいのではないかと思います。
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