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病院からは転院依頼がありました。病院スタッフの話では,彼の妻のよう子さんはうつ病とアルコール依存症で過去に自殺未遂があります。またひろしさんは指示どおりに薬を服用していないのではないかと思われています。子供は2人,19歳と17歳ですが,父親の病気については知っていると言います。ひろしさんはたったいま入院したばかりなのにもう家に帰りたがっています。
 検討課題は症例1と同じです。

問題解決の方途

 最初のケースについて考えてみましょう。まず医師が化学療法に反応すると言ったのを,彼女は治癒するととってしまったということです。ですから医師が言ったことは実はこういうことなのですよということを,私たちのほうからわかりやすく説明をしたところ,彼女は,それだったら化学療法は受けませんということになりました。私たちが使っている言葉をきちんと患者さんが理解してくれているかどうか確認していく必要があることをこのケースから教訓として学びました。
 それから2番目の夫はときたま姿は見せるが,彼女の病気にかかわる人たちの中には含まれない,いってみれば部外者という立場であることが判明しました。そして最もリスクが高いというか,たいへんな状況に置かれたのが娘のえりかです。まだ3歳です。そして母親が死んだあとは誰も面倒を見てくれる人がいなくなってしまう状況です。
 そこで,実際に私たちがどうしたかということを説明しますと,妹のまり子さんに会いました。まり子さんは非常に恐怖感を覚えました。自分が2歳の子を抱えている,それに加えてこの3歳のえりかちゃんも自分が面倒を見なければならないのではないかということで,怖じ気づいたのです。

 

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