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重度のうつ状態になったのは5%にすぎませんでしたし,また5%の患者さんが重度の不安をもちました。
 この研究で興味深い点は,最初の段階ではほとんど誰もが自宅で死にたいと言っていたにもかかわらず,病状が進むにつれてどこで死にたいかということが徐々に変わってきたということです。患者さんのうち54%は自宅で死にたい,家族の45%が自宅で死なせてあげたいとなり,患者さんよりも家族のほうが1週間前に考えを変えているというのも非常におもしろいことです。
 そして,死亡後のフォローアップでは,家族のほとんどが患者さんが亡くなった場所について「それでよかった」と納得していました。つまりホームケアというのは患者さんの50〜60%にとって現実的なものといえるのではないかというのがこの調査からうかがえます。

患者のニーズに応じて

 私たちは患者さんがどこで死にたいか,その選択を尊重できるような制度をつくっていきたいと願ってきました。1950年代にはナースのグループが死にゆく患者さんたちに実際にケアを始め,マリー・キュリー・ファウンデーションという財団を創設しました。5,OOO名のナースがここで働いています。私たちは夜間の看護にこのサービスを使っています。とくに自宅で亡くなりそうな段階に入ってくると,家族にとっても最も恐怖が高まる時期となります。ですから亡くなる前の2,3日間は,夜間のナースを配置して家族に安心してもらうのです。これによって患者さんも家族も安堵感を覚え,安心して過ごすことができるようになります。
 1969年には最初のホームケアサービスが発足しました。セント・クリストファーズ・ホスピスのホームケアサービスです。

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