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チームアプローチの取り方について

 このことに関しては、コミュニケーションの取り方を含め、私自身の態度の見直しとして、課題に挙げていました。 「思いを伝えられない」とか、「誰かがやってくれるだろう」と傍観したりしていることが多かったように思います。そしてこれらによるジレンマは、誰よりもまず、「“私が”伝えない」 「“私が”しない」ことによるものであったのだと反省し、振り返ります。
 講義での字びや実習施設での患者さんと看護婦の、そして看護婦間のコミュニケーション場面による、客観的な学びからも、十分な言葉かけと分かりやすい反応が何よりも大切であると実感しました。まずは私自身の行動を変えることから始めてみたいと思います。また、今後、さまざまな職種とのコミュニケーションが充実し、患者・家族に対してチーム全体での情報の共有とケアの提供かなされるよう、チームの一員としての自覚を持ち、改めていきたいと思っています。
 コミュニケーション論での講義では、カウンセリング技術の学習で行った場面が印象に残っています。聞き手が、話し手の感情に“遅れてついていく”ということや、相手の話したことに対しての自分の感じたことを言葉にして表現する、というような演習は、体験を通しての学びになったと感じます。
 とくに緩和医療においては、チームでの意思決定(ゴール)の統一の必要性をとても強く感じます。個々のメンバーが、チーム全体が、そして組織全体までもが同じ方向性で合意へ向けて話し合っていければ、信頼という固い結びつきでうまく機能していくのではないかと思います。

 

まとめ

 今回の研修では、緩和ケアに関するさまざまな講義による知識・技術の習得と、国立療養所東京病院での実習において、患者と医療者という関係を客観的に見、多くのことを学ぶ機会を得ました。
 日頃抱えていた問題については、先に述べたように私なりに考察し、明らかにすることができたのではないかと思います。講義を聞くことであらためて感じたことのひとつは、実践での、症状マネジメントについての、私の看護婦としての力(知識)不足です。痛みや嘔気、呼吸困難感にしても、患者さんの訴えるあらゆる苦痛で不快な症状は、“患者さんの主観的な体験”と、どの講義でも言われていました。患者さんの訴えをまず最初に聞くのは、多くは看護婦であろうと思います。それゆえにその情報を的確に、専門性を持って、マネジメントしていくことは我々に課せられる責任であろうと考えます。チームアプローチを考える上でも、患者さんに適切な情報を提供し、より高いQOLを得るためにも、医師に委ねるばかりでなく、看護婦もより深い知識を持つ必要があるのだと痛感しました。
 実習での学びとしては、実習施設の特徴である、HIV患者さんへのケアの実際を知り、多くの知識を得ることができたと同時に、私自身の偏見にも気づき、改めることができました。緩和ケアはがん末期患者さんだけでなく、HIVやその他のケアを必要とされる、すべての患者さんへ提供されるべきものなのではないかと考えます。HIVに関しては、まだ多くの偏見かあり、患者さんは孤独感や疎外感のなかで過ごしておられるようにも感じられました。がん末期患者さんについても同様に、家族からであったり、この世からであったり、このような痛みを覚えることはあるのではないかと思います。最後まで人と人とのぬくもりか感じられ、人間らしい生を全うできるよう、一人一人の患者さんとつながりを持って関わっていければと思います。

 

おわりに

 今回、このような貴重な研修に参加させていただき、学習することができたことを深く感謝しています。この学びを、自分の施設においてのケアに生かせるよう、スタッフ間で共有し、継続した学習を深め、緩和ケアの質の向上に努めていきたいと思います。

 

 

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