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研修の概要

はじめに

 この緩和ケアナース養成研修は、日本財団の援助により今回初めて立ち上げられた研修である。
 ねらいは「緩和ケアの基本的考え方を理解し、専門的知識 技術を習得して実践能力を高める」である。そしてそれを充足するためのプログラムを学習内容により作成した。そのプログラムに沿って行われた研修の実施状況、研修の評価について報告する。

 実施期間 平成10年5月25日〜7月17日
 受 講 者 21人

実施状況

1)緩和ケアの理念を理解するために

 (1)緩和ケアについて緩和ケア病棟での医療 ケアを中心に講義があった。受講生はその中で、「悲嘆と抑鬱」「症状コントロール」をキーワードとしてあげ、今後PCU、ホスピスを立ち上げていく病院の受講生にとっては痛みの考え方、痛みのコントロールについての講義は衝撃であったようである。また緩和医療を実践する医療者の姿勢として、信頼・忍耐・謙遜・うそをつかないと捉えていた。
 またWHOの緩和医療に対する考え方や、がん医療の将来展望等広い視野で緩和医療を捉えることができたようである。そして全人的医療や全人的ケアについて再考する機会となっている。
 (2)生命倫理、看護倫理についてキーワードを「QOLの総和をめざせ」「生きる」「倫理的ジレンマ」「自己決定」と捉えている。倫理は普遍的なものではなく、時代により変化することを知った上
で医療の現場にあっては倫理的立場からその行為を考え、自分に問いかける必要があることを学習している。さらにQOLはとのように考えるか、誰のためのものであるかを再認識し、それがキーワードの「QOLの総和をめざせ」という表現になったと考える。

2)緩和ケアに必要な知識、技術の習得

 (1)腫瘍学はがんと付き合うための第一歩である。緩和ケアががんを持っている人のケアであるから、「がん」を十分に理解して、そのケアに当たることが必要である。キーワードは「遺伝子治療」
「がんとの共存」「がんの予防」「がんの治療」と捉えている。
 (2)症状緩和のために症状の病態を理解し、医療者の考え方ではなく、本人の意志が大切という講義を受け、各受講生はキーワードを「症状マネージメント」「セルフケア」「がん治療の原則」「総合的モデルの活用」と捉えている。また疼痛コントロールではキーワードを「WHO方式痔痛治療指針」「鎮痛補助薬」「副作用」と捉えている。疼痛コントロールは看護婦の担う部分が大きく、看護婦の疼痛コントロールに対する知識、アセスメントの不足が疼痛のコントロールに影響することを看護婦の責任として自覚していた。対象の訴えをそのまま受け止めるということに関しては、言葉と表情の関連だけで判断するのではなく、「訴えを聴く」ということからケアが始まることに気づいた受講生もいた。症状コントロールの精神変調・全身倦怠 死前喘鳴・不安・譫妄 セデーションに関しては講義前にグループワークを行い、発表原稿を作成した。それぞれの分担個所のプレゼンテーションを行い、講師にコメントを受けることができた。自分達が発表を行い、知識を整理し、講師からのコメントを受けたことでより知識が深められ、より積極的に授業に参加できたようであった。
 (3)食事に対しては経口摂取による食事の重要性、看護として工夫されるべきことについて考え、そのために口腔のあれが食事に大きく影響することを学習した。特に口腔ケアは必要が生してからではなく、感染予防も含めてセルフケアを行うところがら考えられるようになった。また、その他の身体的症状に対しても病態生理、ケアの方法について学習した。
 (4)コミュニケーション論に関しては「分かち合い」「共にある」「自己受容」「価値観」「個の尊重」をキーワードとしてあげ、相手を受け入れ、言葉だけではなく、その人の全体を聴き、その人を理解する観察力と感性が必要であることを学習している。コミュニケーションの実際として模擬患者と行ったロールプレイでは、傾聴、共感、沈黙、対応の難しさを身をもって感じていた。
 (5)社会資源の活用に関しては「何がその対象に必要な資源であるかが分かる知識」が必要である。講師の都合で実習の後の講義であったため、実習前に講義が終了しているほうがより効果的であった。

 

 

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