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この問題解決能力とか、社会的態度、実践的な行動力とはいっても、その基になるのは、そういった現象に対して、環境問題について関心をもつ。これが、やはり第一歩ではないかと思うんですね。また、そういう面で、学校においては、子どもたちにそういうものに関心をもたせるということ。こういうことが、学校だけじゃありませんけれども、非常に大事なところかと思います。そうしませんと、いわゆる無関心といいますか、そういうものに興味をもたない、関心をもたない。そういった子どもが多くなるということが非常に問題であるかと思うわけであります。

 次に、自然や人間の立場に立って事象を総合的に捉え、事実を尊重し、公正に判断する力を身につけさせるという部分があるかと思います。特に環境というように、非常に総合的で複雑な事象について、正しい知識に基づいて正しい判断ができる力を身につけさせるということ、またそういったことを、もちろんこういうことも、子どもの発達段階に応じて当然変わってくるかと思いますけれども、やはり狙いの一つになります。

 それから、次に環境状況の変化を捉え、環境について考えたり、環境に与える影響を評価できる力、そういったものを育てていくということがあるかと思います。こういったものは、もうちょっと上にならないと、小学校段階からこういったことは無理かと思いますけれども、やはりいろんな勉強を通して必要になってくるかと思います。

 それから、環境に関わる事象を統計的に捉えたり、必要な情報を収集・処理する力を育てる。そういう面で数的処理能力とか、情報処理能力、そういったことも大事かと思います。学校でもって、いろんな教科がそれぞれ環境とこう関わっているわけであります。先ほども事例にありましたように、例えば社会科とか理科とか家庭科とか保健体育とか、みんな環境となんらかの関わる内容をもっているんですけれども、一番教科として環境と関わらないといわれているのが、小学校、中学校、高校でやる算数や数学だといわれてるんです。しかし、考えてみると、算数、数学というのは、直接環境問題は取り扱わないかもしれませんけれども、ここにありますように、環境に関わるいろんな事象を数的に捉える、統計的に捉える、あるいは必要な情報を収集・処理する、そういった能力、情報活用、情報処理、数的処理、そういう面では、やはりそういった算数、数学的な力というのも間接的に環境とも関わり合ってくるかと思うんです。

 こういうような非常にグローバルな、トータルとしての能力、狙いと思います。それだけに、環境教育というのは、まさしく特定の教科というものを越えた、非常に学校全体を挙げて取り組む、非常に大事な学習ではないかと、こういうふうに思っております。そういう面で、これからは、教える先生方の、やはりそういったものに対する資質とか、それから能力とか、そういうものが非常に大事でありますし、またそのためには、そういう先生方を送り出す教員養成大学の環境教育というものがどれほど充実してるかというようなものにも関わり合ってくるんではないかと思います。

 今回この講座は、滋賀県で行ってるわけでありますけれども、私も文部省にいた関係でよく存じてるわけですけど、滋賀県は琵琶湖というのを抱えているだけに、昔から環境教育に非常に熱心な県で、それも特定の学校がやっているというだけじゃなくて、教育委員会挙げて、滋賀県の全小・中学校、高等学校、環境教育を非常にこう系統的に、組織的に、そして長い時間かけて地道にやっていますし、またそれを実践してるという面では非常に素晴らしい県ではないかと思っております。文部省の環境教育フェアという、環境教育に関心をもつ全国の、全県の先生方が集まって、年1回研修会、全国の環境教育の研修会というのを行っているわけですけれども、その第一回もこの当地滋賀県でやったことを今思い出しております。また、滋賀大学の教育学部なんかも環境教育の講座を独立してもっておりますし、環境教育の県のいろいろな博物館等々、非常に社会教育でも熱心にやって、わが国の環境教育のまさにリーダー的な、パイオニア的な県ではないかと、こう思っております。また、そういうところで、このナショナル・トラストの講座が行われたということは、非常に素晴らしいことかと思っております。

 現在の学校における環境教育の一端というものをお話できて、少しでもご理解得られれば幸いであります。ありがとうございました。(拍手)
(文責・事務局)

 

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