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講演


「木を植えた男を訪ねて―環境映像と環境文学の世界一」

新井 満

【司会】諸井先生、ありがとうございました。それでは新井満先生のご紹介を申し上げます。先生は、作家、それから作詞・作曲家、歌手、写真家、ビデオプロデューサー、ディスクジョッキー、それから長野冬季五輪イメージ監督など、一つのところにとどまらないマルチフェースのお方でございます。上智大学法学部のご卒業、1970年電通にお入りになります。それから、音楽・映像プロデューサーとして200タイトル以上の環境ビデオを制作し、この分野の草分け的存在でございます。また、シンガー・ソングライターとして、「組曲・月山」など、多くのヒットレコードを出しておられます。著書には、『尋ね人の時間』、『環境ビデオの時代』等がございます。

【新井】新井でございます。今日は環境映像と環境文学について、お話をいたします。なぜ私が環境映像を作るようになったか、また環境文学というものを書くようになったか、それにはもちろんきっかけがございます。
 今からざっと28年ほど前になりますけれども、私、大学を卒業いたしまして、就職をしました。就職したのは広告代理店の電通でございます。ちょうど1970年、万博の年でした。高度経済成長もそのピークを迎える頃です。本社に入りまして、関西、大阪、神戸と勤務をいたしました。ここでテレビCFのプロデューサーになりまして、約10年間の間で何百本ものテレビCFを作りました。ご存じのように、テレビCFというものは、15秒、30秒、長くとも60秒ぐらいの世界でございまして、撮影現場は分刻み、秒刻みでございます。大変めまぐるしい、忙しい世界でございます。しかも、このテレビCFの世界は、大変短い秒数の中で、あらゆる情報を詰め込む。もちろん、商品名は連呼いたします。それから値段はどのぐらいかという情報。それから形はこんな形だと、色はこんな色だと、キャラクターのタレントはこういうタレントさんだと。それから、CMソング・イメージソング、テーマソングはこういうやつだと。いろんな情報を、無数にある情報を、コンデンスミルク状態に詰め込みます。よく言うんですけれども、いわば足し算の世界がコマーシャルの世界でございます。

 ただでさえ忙しい日常でございましたけれども、その上に、私は突然歌手になってしまいました。いわゆるシンガー・ソングライターということなんですけれども。忙しい上に、突然、歌手になってしまった。なぜ新井がサラリーマンでありながら突然歌手になってしまったか。このお話をいたしますと、ざっと2時間ぐらいかかりますので、きょうは省略をいたします。ただ、新井はよく歌手をやっていたというふうに申し上げると、新井の歌なんて聞いたことがないというふうにおっしゃる方が多いんですけれども、マーケティング調査ではございませんが、新井満の歌を一度でも聞いたことがおありになるっていう方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか。手を挙げていただけますか。はい、大変多うございますね。約3名の方が、手を挙げていただきました(笑)。ありがとうございます。

 しかし、こう見えても、侮ってはいけないんですね。こんな顔をしておりまずけれども、LP、

 

講師略歴と主要著書
 
日本ペンクラブ理事、映像プロデューサー、長野五輪イメージ監督、電通東京本社映像事業高映像事業部長、環境ビデオ制作に従事。シンガー・ソングライターとしても活躍。環境問題に深い関心を持つ。絵画・音楽にも造詣が深い。「尋ね入の時間」(芥川賞受賞作)「ヴィクサシオン」(野間文芸新入賞受賞作)「サンセット・ビーチ・ホテル」「足し算の時代引き算の,思考」「環境ビデオの時代」「アルプスの少女 ハイジ紀行」
ほか多数。

 

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