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(3)盲導犬を使用して良かった点、問題点
盲導犬を使用して良かった点として、現使用者、元使用者ともに「安全に速く歩けるようになった」「いつでも外出できるようになった」など、歩行の利便性と自由度が高まったことを挙げている。さらには、「運動不足がなくなり健康になった」といった身体面の健康にとどまらず、「社会との関わりが広がり友人等が増えた」「町の中で孤独感がなくなった」「生きがいを感じるようになった」など、精神的な充足感を味わっている人も多い。こうした結果から、盲導犬は外出時をはじめとして、日常生活のパートナーの役割を果たしていると言えよう。
これに対して、盲導犬を使用する問題点として、現使用者、元使用者ともに「入店拒否などで活動が制限される」を指摘する人が約5割に達している。以前に比べて社会の理解は進んできているものの、宿泊施設や飲食店、公共交通機関などの一部では盲導犬の同伴を拒否しているところがあるものと思われる。そのほか、「医療費等の経済的負担が大きい」「世話に手間がかかる」「隣近所や周囲の人に気を遣う」などの点についても2〜3割の使用者が問題点として挙げている。
このような状況をひとつずつ解決していくために、今後も引き続き、盲導犬に対する社会の理解を深めていくための啓発活動は重要になるであろう。

(4)今後の盲導犬の使用意向
現使用者の中で「代替犬を希望する」は62.9%であり、盲導犬との生活に満足している人に限れば、代替犬の希望は70.8%に達している。
一方、盲導犬の使用を今後希望しない人は、現使用者の17.1%、元使用者の46.7%を占めている。その主な理由として、現使用者、元使用者ともに、「自分自身の高齢・健康上の問題」と「盲導犬との離別・死別がつらい」という点を挙げる人が約半数に及んでおり、「世話に手間がかかる」「医療費などの経済的負担が大変」など、盲導犬を使用する上でかかる実質的な負担に関する問題点を大きく上回っている。特に、元使用者の約6割は「離別・死別がつらい」と答えており、現使用者を20ポイントも上回っていることから、心のケアを含めた幅広い対応の必要性が生じてきているものと思われる。

2−3 盲導犬希望者と一般視覚障害者に関する課題

(1)回答者の属性
1 盲導犬希望者の属性 各盲導犬訓練施設に盲導犬の使用を申し込んでいる視覚障害者(以下「盲導犬希望者」)151名のうち、回答のあった88名について年齢別にみると、「60代」が最も多く25.0%、次いで「50代」が23.9%、「40代」が19.3%、「30代」が15.9%となっており、平均年齢は50.1歳である。外出の頻度をみると、「ほぼ毎日外出する」が56.8%、「ときどき外出する」が40.9%となっている。希望者の約6割は「白杖などによる単独歩行」を行なっているが、家族やガイドヘルパーによる手引き歩行を行なっている人も3割を占めている。
また、「歩行訓練指導員による白杖歩行の歩行訓練を受けた」経験者は55.7%、「日常動作(日常生活)訓練を受けた」人は34.1%であった。

2 一般の視覚障害者の属性 本調査で回答のあった一般の視覚障害者は1,797名であるが、このうち視覚障害の程度が「1級」は68.6%、「2級」は20.1%となっており、1〜2級で回答者の9割を占めている。年齢別にみると、「50代」が最も多く27.9%、次いで「40代」23.4%、「60代」16.0%、「30代」12.9%、「20代」10.5%の順になっており、回答者の平均年齢は47.7歳であった。
外出の頻度をみると、「ほぼ毎日外出する」53.9%、「ときどき外出する」41.1%であり、全体の約95%が外出している。主な歩行方法としては、「白杖などによる単独歩行」が64.0%と高い割合を占めているが、年齢が高くなるにつれて手引き歩行を行なう割合が高くなる傾向にある。また、現在の歩行に対する満足度については、「たいへん満足している」「ほぼ満足している」を合わせた満足層は約45%である。一方、「まったく満足していない」「あまり満足してない」と答えた人は全体の約3割であるが、家族による手引き歩行を行なっている場合、歩行に不満を持つ割合が高くなる傾向がみられた。




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