2−3−10 まとめ・考察/盲導犬希望者と一般視覚障害者に関する課題
(1)盲導犬についてのイメージ
盲導犬希望者が抱く盲導犬のイメージは、「賢い」「友達・パートナー」「忠実・柔順」「頼りになる」「外出が安全」など、盲導犬の果たす具体的な役割に関連するものが多く挙げられている。
一般の視覚障害者の盲導犬イメージは、「賢い」「頼りになる」「忠実・柔順」のほかに、「かわいそう」「世話が大変」などが挙げられており、盲導犬希望者とは異なるイメージを抱いている人が多くなっている。
なお、盲導犬希望者については、「世話が大変」「上手に扱えるか不安」「入店や乗車を拒否される」「訓練に労力がかかる」、「貸与に費用がかる」など、盲導犬を持つことの負担や不安につながるイメージはほとんど持たれていないことが明らかになった。
(2)盲導犬に対する関心
一般の視覚障害者の中で、盲導犬に対する関心が「おおいにある」と答えた人は29.4%、これに「少しある」を合わせると70.5%に達しており、盲導犬について広く関心を持っていることがうかがえる。関心の程度については、盲導犬あるいは盲導犬使用者が自分にとって身近な存在であるほど関心は高まっていくと考えられるが、盲導犬に対するイメージはこれまでに接触した情報や個人的な経験・体験に基づいてひとりひとりの中に作られていくため、情報量や接触経験が少ないほど、偏ったイメージが形成されやすくなると考えられる。
従って、一般の視覚障害者、とりわけ盲導犬の使用を迷っている視覚障害者や、あるいはその家族などに対して、まず客観的な判断材料となるような正しい知識や理解を持つ機会を増やして、関心を持ってもらうことが啓発の第一歩となるであろう。
(3)盲導犬希望者の「希望理由」
盲導犬希望者の希望理由については、現使用者や元使用者の希望理由とほぼ一致している。現使
用者の90%以上が盲導犬との生活に満足しており、盲導犬を希望した理由はほとんど実現したと考えていることから、盲導犬希望者においても使用前の期待度と使用後の満足度に大きな乖離が生じる可能性は少ないものと思われる。
(4)一般の視覚障害者の盲導犬希望状況
一般の視覚障害者の中で、盲導犬を「今すぐ希望する」と答えた人は3.3%、「将来希望する」は15.5%となっている。視覚障害の程度を1級に限定した場合、「今すぐ希望する」は4.3%、2級では0.8%であった。また、盲導犬への関心が「おおいにある」と答えた人をみると、盲導犬を「今すぐ希望する」は10.6%、「将来希望する」も30.1%とかなり高くなっている。
さらに、白杖歩行訓練や日常動作(日常生活)訓練を受けた経験がある場合は、盲導犬を希望する割合が高くなる傾向が見られた。
これらの調査結果をもとに盲導犬希望者数を推計してみると、障害の程度が1級あるいは2級の視覚障害者の中で「今すぐ希望する」と答える可能性のある盲導犬希望者数は、全国でおよそ4, 700名と考えられる。さらに、「将来希望する」と答えたなかで「盲導犬への関心が高い」かつ「盲導犬についてよく知っている」視覚障害者を潜在的な希望者として加えると、全国の盲導犬希望者数は約7,800名と推計される。(注/「11.参考:一般視覚障害者の、全国における盲導犬希望者数の推移について」参照)
こうした推計値に対し、盲導犬の使用申込者は1年に150名程度にとどまっていることから、盲導犬希望者はあまり顕在化していないと考えられる。盲導犬を使用することによって視覚障害者は高い満足感を得る可能性が高いにもかかわらず、視覚障害者の多くは、適切な情報やアドバイスがない、あるいは誤った盲導犬イメージを持っているなど、盲導犬使用者との間で、意識にかなりの開きがあることから、盲導犬の使用を希望し、申込みを行なうまでに至る人数は極めて限られたものになっているものと思われる。
しかし、一般の視覚障害者の中で盲導犬への関心がこれまでよりも高まったり、歩行や日常動作(日常生活)訓練の機会が増えていった場合には、盲導犬希望者が急速に顕在化することは十分に考えられる。
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