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グループホームの住まいに関する調査研究報告書


    グループホームの住まいに関する調査研究 8 大分大学 鈴木義弘


      まとめ

?@調査結果の総括
GH入居者および生活支援登録者は、「糸口」では軽度者であり結婚生活者が多い。これに対し、「雲仙」ではより重い障害者の地域生活が実現している。GHにおけるB1・A2者さらに生活支援登録者でもB1者の高い比率が特徴的である。給食サービスによる調理負担(当事者および世話人)の解消のみならず、綿密多様な支援体制の成果といえる。
退居者については、双方の共通点として、積極的な転居者(住生活環境向上を主体的に図ったと考えられる転居)は、GH居住が相対的に長く、地域生活による経験の蓄積が次の要求につながっているということができる(GHのインキュベート機能の側面=すなわち居住の最終形態ではなくプロセス)が、女性の少なさの要因について明らかにする必要がある。
平面構成の特徴として、「雲仙」では1人2室型の各住戸(個室)の独立性の高いプランが創案されており注目に値するが、2室の用途分化傾向は弱く、今回の時点ではその明確な有効性は見出せていない。家具配置の上では、女性の家具量の多さが指摘でき、衣類の所有と室内演出の配意が男性とやや異なるといえる。また、食事を中心とした住まい方が両施設好対照である。DK利用あるいは専用室確保のイス座で、食事室と居間を明確に分離している「糸口」のGHに対し、「雲仙」では基本的に床座でかつ食事室と居間兼用を図っている。これは、施設の方針を明快に反映したものといえる。

?A今後の課題
コロニー雲仙における知的障害者の地域居住は、他の情報媒体でも詳述されている北海道伊達市「太陽の園」・滋賀県信楽町「信楽学園」を母体とした活動などと並んで、全国屈指の先進例であるといえ、集積効果の有効性が発揮されている。しかしその密度は、ノーマルな住環境保持(特殊な地域になりすぎないこと)・支援のための職員の労力(支援人数・支援対象圏域の広域化)・就労の場の許容量などから上限にきているとも考えられる。糸口福祉センターの場合も、現状ではバックアップ施設の経済的条件下での職員配置は限界であるとの指摘があり、増設予定はない。

こうした経験的蓄積が分散化され、各地でGHを契機とした地域生活がさらにかつできるだけ早く進んで行くためには、個別性の強いといわれる社会福祉法人の障壁を越え、単一法人の努力だけではない流動的な支援体制の組織化が要件の一つといえるのではないか。
建築的観点からは、本年度は事例抽出による実態調査の域を出ていない内容に止まっているが、次段階への基礎的認識を得られたと位置づけられる。これを踏まえて、実際の生活行動の詳細な把握に基づく分析・評価を行うが必要といえる。また、コロニー雲仙において法人単独事業として実施されている自立訓練棟(あるいは生活実習棟)におけるような重度者・自立性の低い障害者への生活支援や住まい方についても、着目してゆく必要がある。さらに、最も重要な入居当事者の評価・希望が可能な限り反映されるべきであり、こうしたアプローチも念頭に置きたい。
以上、今後の課題として記しておく。

謝辞
コロニー雲仙県南地域サービスセンター峯友所長(双葉寮寮長)と調査票記入にご協力いただいた職員の方々、糸口生活支援センター犬丸所長(糸口通勤寮寮長)および担当和気さんはじめ皆様に大変お世話になりました。深く感謝の意を表します。
なお本調査は、吉田美登子君(大分大学大学院)・川谷浩史君(大分大学4年)の補助を得て行いました。併せて、ここに記します。

1998年1月
担当:鈴木義弘(大分大学)






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