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グループホームの住まいに関する調査研究報告書


    グループホームの住まいに関する調査研究レポート 4 愛知工業大学 林章 平成10年1月31日 グループホーム・生活ホーム調査報告書 愛知工業大学 林章


      ひかりのさと戸田ホーム

0.住所等
〒470−21 愛知県知多郡東浦町大字緒川字東米田23
PHONE 0562-83-5344(ファクシミリ兼用)

1.開設等
○開設および認可は平成4年4月1日
○利用している制度は、国のグループホーム制度

2.入居者
○届け出定員 4名
○現在員数  固定入居者4名(男2名+女2名)そして犬が一匹。
○ 〃 の障害レベル:中度3名(うち1名は重複障害)+重度1名。ただし中度2名も高齢化し重度化しているようにみえます
○一般就労1名(中度)+福祉就労3名:いずれも愛知県心身障害者小規模授産事業所「ひかりのさとファーム」(社会福祉法人愛光園)に勤務しています
○月額利用料37,500円(全員同額)

3.バックアップ施設
形式的には社会福祉法人愛光園精神薄弱者更生施設「まどか」ですが、実質的には、同法人が経営する知多地域障害者生活支援センター「らいふ」がバックアップしています(PHONE まどか:0562-83-5344 らいふ:0562-44-6719)。

4.世話人およびバックアップ体制
a)世話人は1名。増築した平成8年12月までは、同居していましたが、増築後は隣家に住んでいます。もともと福祉とは無縁の仕事をしていた人です。グループホーム開設の半年間、「まどか」で研修しました。開設以来約6年世話人を続けていますが、その間とりわけ地域交流に熱心に取り組んできました。彼女の名刺の裏には、《…どんなに重い障害をもっていても誰ととりかえることもできない個性的な自己実現をしています。自己実現をめざして、知的障害をもった人たちが世話人(援助者)の支援を受けながら地域の一員として、社会人として当たり前の生活をしていこうとしています。その生活の場をグループホームといいます。地域の一員としてお付き合い下さい。》
という言葉が印刷されています。

b)バックアップ体制
このグループホームだけでなく、法人が経営する4ヶ所のグループホームはいずれも次に述べるような支援体制をとっています。
一次支援=世話人 二次支援=ボランティア 三次支援=生活支援センター「らいふ」この法人のグループホーム第一号であるひかりのさと戸田ホームを開設して当時は、更生施設「まどか」の職員がバックアップしていましたが、勤務の終わった職員が夜間の突発的な事態に対応することの限界を感じました(「らいふ」所長山田優氏)。職員に無理を強いる体制では、グループホームは1〜2ヶ所が限界でしょう。しかしそれでは障害者のニードに答えることはできません。そこで考えついたのが、ボランティア(主に地域の夫人たち)です。バックアップ施設はボランティアでも支援しきれない部分を支援するという体制です。この体制によってグループホームを計画的に増やしていくことができるようになりました。なお、重度加算が実現された時点で、その加算分を各グループホームにつけず、全グループホーム支援の専従スタッフを確保し、生活支援センター「らいふ」が開設されました。これによってグループホームの総合的な支援体制が固まったと考えることができます。

このシステムは、支援の厚みが増したというマンパワーの充実を意味するだけではなく、従来付加価値的な存在にとどまっていたボランティアを体制のなかに組み込むことで、システムそのものがオープンな性格をもつようになったことを意味しています。ここでの仕掛人である山田優氏は、所長を兼務する小規模授産事業所「ひかりのさとファーム」でも、他の法人が経営するグループホームの居住者を受け入れるなど、社会福祉体系を様々な形でオープンなものとする試みを実践しています。昨今グループホームのミニ施設化が問題となり始めていますが、これまでの発想で支援の充実を図ると、ともすればクローズな自己完結型のシステムを築きがちな人たちに対して、ここでの実践は大いに刺激になるのではないでしょうか。

5.土地・建物
○所有:土地、建物ともに借りています。家主の方は一般の人です。

○建物形式:木造平屋建て 一戸建て、ただし平成8年12月に増築しています。
以前は納屋として使われていた建物を家主負担で改造してスタート、増築は軽量鉄骨プレハブ、これも家主の負担で行われています。
家賃は月額50,000円です。

○建物面積:約68?u

6.日常の生活
a)週末:開設しています。各人の帰宅はおおむね月1回程度です。

b)グループホームでの生活:余暇の過ごし方・趣味は、以下の表にまとめました。

c)地域生活
このグループホームの生活の豊かさは、居住者の地域生活にはっきり現れていると言えるでしょう。ここでの主な傾向をまとめると以下のようになります。

?@地域の社会資源や店舗の積極的な活用
前者としては、図書館・老人憩いの家(そのなかで陶芸教室や生け花教室が開かれています)・公園・ゲートボール場・神社ほか。利用の仕方は全員の場合と個人の場合の両方があります。また地域の行事(お祭りなど)には全員で参加しています。
医療にかかる場合も、専門治療を必要とするBさんをのぞき、他のメンバーは地域の診療所を利用しています。居住者が日常的に利用している店舗は、理髪・美容院、コンビニエンスストア(利用の仕方は各人各様)、喫茶・飲食店、本屋、写真屋、洋菓子店、雑貨屋などです。近くのパチンコ屋にいった人もいますが、簡単に負けてしまったので、それ以来行かないそうです。
利用の仕方も、全員で行くことが多いファミリーレストランがある一方で、個人の行きつけの喫茶店があるといったように、様々です。またそこで出会った人がグループホームの知り合いになっていくというケースもあるようです。近くの農協の青空市場に店を出しているおばさんは、いつの間にか、グループホームにちょいちょい立ち寄っていく人になっています。

?Aとにかく積極的に地域に出る
特定の目的で外出だけでなく、散歩などとにかく外に出る機会を多くしています。それがまた新しい人との出会いをつくっていきます。Cさんと早朝一緒にジョギングしている男性は、もともと散歩の時に出会った人で、訳を話して一緒に走ることをお願いした方だそうです。誰もその方の住所や仕事などを知らないままのお付き合いが続いています。
小規模授産事業所への通勤にも工夫が見られます。送迎サービスをしていますが、歩行に困難がある人をのぞき、ドアツードアの送迎はせず、駅近くなどの集合場所までの送迎としています。それによって自然に地域とふれあう機会が増えていきます。

?Bボランティアとの近所づきあい
戸田ホームは、10名を超えるボランティアが支援しています。そのうち8名の方の家はグループホームからの徒歩圏内にあります。ボランティアの方々は、グループホームに来て支援をする存在だけでなく、陶芸教室などでの仲間であり、気楽に居住者の訪問を受け入れる近所のおばさんでもあるのです。訪問は全員の場合がある一方で、個々人の場合もあります。
また全員での旅行の際には、飼い犬を預かってくれる方もいます。なかなか人に馴れない犬で、私も訪問時にずいぶん吠えられました。グループホームの親しい友人でないと預けることがむずかしいのですが、気楽に預かり、また犬の方も安心して移っていることに日頃の親密度をみることができるように思います。

7.ひかりのさと戸田ホームの特徴―地域に広がる生活の質
建物は増築した現在でも狭く、それ以前は世話人が同居していたため、2人室×2部屋という構成でした。現在でも都市近郊に立地するグループホームとしては、決して恵まれたものとは言えません。しかし今回あえて報告対象としたのは、ここでの地域生活がきわめて豊かなものであると考えられるからです。
その豊かさを可能にした背景としては、世話人、バックアップ組織、そしてボランティアの人たちの努力があったことは明白ですが、その一方で、この地域が郊外型住宅地と農村の接する地帯にあるという立地も無視できません。徒歩圏内に日常生活に望まれる店舗、診療所そして鉄道駅が揃っている一方で、散歩やレクリエーションにふさわしい緑地が空地が多く残っています。また社会的な関係をみても、戸田ホームを支援するボランティアが多く近隣に生活しているだけでなく、ボランティア活動など直接的に支援するわけではないが、地域の一員として受け入れるにしたがい、支援の気持ちをもって近所づきあいをするようになった人々も増え、多彩な人間関係を地域のなかで構築しています。
一般にグループホームの質を論じる際、とかく建物などのハードに目がいきがちですが、戸田ホームは、地域との関係というソフト面の大切さを教えてくれています。























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