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グループホームの住まいに関する調査研究報告書


    グループホームの住まいに関する調査研究 3 横浜国立大学 大原一興 横浜市内における知的障害者グループホームのケーススタディー調査 −報告書− 1998年1月 横浜国立大学工学部


      グループホーム未来

1-概要

住所 横浜市旭区本村町33-2

電話/FAX 045-366-1447

開設年月日 1997年4月1日

運営の主体 グループホーム未来運営委員会

支援、後援団体 なし
(大家さんは作業所の所長でもある)

定員 6名

入居者数 男性4名 女性2名

建物形態 軽量鉄骨2階建一戸建住宅

運営方針 「仲間」ひとりひとりの生活を尊重し、「仲間」が『自由に発言し、自由に行動し、楽しく生活する』ことが保証される援助ができるように
また、「仲間」ひとりひとりが『地域のなかで、自立した生活をおくる』ことを目的として、生活全体のバランス−グループホームが生活の全てではない−を「仲間」自身が選び、決定していくように援助する

2-開設まで〜現在に至る経緯

開設経緯 以前大家さんは電気系の会社を経営しており、そこで障害者を雇用していたが、不況などのため経営が困難になり、会社をやめて地域作業所にした
この様な経緯の中で、障害者の生活のゆとりの無さ、また障害者だからといっていつまでも親元で親の援助を受けているのはおかしいのでは、と感じグループホームを作ることにする
本当は法人の元でB型グループホームを作りたかったので、周辺の施設で大家さんの考えるグループホームについて話してまわったが大家さんの要望と合わず、A型ホームとして作ることにする
大家さんは、グループホームや援助は障害者にとつては生活の保証だと考えているのでB型にしたかった
・A型…市からは助成金というかたちなので助成がなくなる可能性もある
・B型…社会福祉法人なので法律に基づいており、援助も保証されている
大家さんはグループホームに対していろいろな要望があったので、建物を新築することにし、土地探しから始め、設計にも関わった
・開設1年前 5名の入居予定者は決まっていたので、いろいろなグループホームで体験入居を始めた
入居者は相性を考え2人ずつの仲良しペアで決まっていたが、1名のペアがいなかったので、途中でその人と仲がよい人が加わる

・1997年4月1日 開所
今後もこの様なかたちのグループホームを作っていく予定でいる

建物完成までの経緯 大家さんの条件
・大家夫婦さんが隣りに住む形にすること
・各居室には、専用のキッチン、トイレ、浴室を付けること
プライバシーや衛生面を考慮した
既存の建物の改造ではこの条件を満たすことができないと考え、土地探し、設計段階すべてを大家さんがした
入居者の親ともその都度話し合い、親の希望も取りいれた
大家さんは外階段のアパート型で自立性の強いものを作ろうと考えていたが、ある親から不安、危険があると言われ、内階段にした
最終段階の外装、内装の色選びなどは入居者で決定した

地域との関わり 大家さんの住居が隣接しているので、グループホームというよりは大家さん宅という感じで受け入れてもらいやすい
グループホームという名称はなじみもなくあまりよい印象がないので、大家さんが一緒に住む寮を作るという挨拶を近所にしたが、特に反対はなかった

運営委員 15名
B型にできずA型としたが、周辺2ヶ所の施設の職員が運営委員として入っている

3-生活

生活日課
・食事は全員一緒にというわけではないがたいてい一緒に食べる
夕食 18:30〜
・週1回入居者によるミーティング
入居者からの提案で始まった
共同生活のための話し合い
・作業所へ通う4人は、週2回自分たちで弁当作り

土日 全員帰省する
都合により帰省できない場合も大家さん宅が隣接しているので滞在可能

行事
・外食 2ヶ月に1回
・誕生会
仕事先の行事がたくさんあるので、グループホームは休息の場として特に行事はない

生活状況 掃除、洗濯は各自でする
各居室には職員もあまり立ち入らない

お金の管理 家賃は入居者が各自で郵便局から運営委員会へ振り込む

4-職員

職員数
常勤 1名(女性)
非常勤 ・夕食作り 数名
・会計 1名(運営委員会へは報告する形)
・その他 1名

勤務時間 16:00もしくは17:00〜翌8:00すぎ
月〜金曜日まで1名で宿直

職務内容 利用者が『自由に発言し、自由に行動し、楽しく生活する』ことが保証される援助を行う

ボランティア 生活の場での体験・経験の援助
・パン作り講習会
・ボーリング、カラオケ大会 など

職場等との折衝 職員間で調節、連絡

家庭との関わり 個別対応

5-入居者

主な収入 年金+給料

入居費
・月65,000円(すべて込み)
入居者の収入+年金で賄えるように月60,000円にしたかったが無理だった
・入居前300,000円
一時的に住む場所ということではなく、自分の家と考えたので

6-建築形態

構造、形態 軽量鉄骨2階建一戸建住宅
大家さんの住居が隣接するが、建物内でのつながりはない

規模 敷地面積 197.28?u
延床面積 146.19?u

建築年数 1年(開所時新築)

権利関係 賃貸借権
(隣接する住宅に住む大家さんが作ったグループホームである)

家賃 月420,000円

建物概要
・居室 6室
ミニキッチン(ミニ冷蔵庫、電気コンロ付)、ユニットバス(トイレ、洗面所付)付
・体験入居室
浴室付
・職員室
・台所、食堂
・共用スペース、洗濯場
・共用洗面所
・共用トイレ
各部屋エアコン付
浴室もついているので温度、湿度調整を自己管理するように、各居室に温度湿度計を置く

共用空間
・1階 食堂
10人は余裕で座れる大きなテーブルが置いてある
(みんなで使う食卓と食器棚は立派な物にしたいという母親たちの希望で、入居前に払ったお金から購入)
テレビは置いていない
(テレビを置いてしまっていたらそちらに集中してしまい、団らんができなかったのではと考えている)
多目的ホール的に使用
・食後に団らん
(一般就労の2人は早く寝ることが多いが、他の4人はよく食堂にいる)
・週1回のミーティング
・ボランティアによるパン作りの講習会 など
・2階 各居室前の共用空間
洗濯機2台、乾燥機1台、大きな洗濯干し(ベランダが無いので)、テレビが置いてある
・数人でのお喋り
・洗濯をしながらテレビ観賞
・テレビ観賞 など

居室
・キッチン付
(ミニ冷蔵庫、電気コンロ、流し)
冷蔵庫には飲み物などを入れている
コンロはあまり使用しない入居者もいるが、ラーメンなど調理する人もいる
・ユニットバス付
(バスタブ、洗面台、ウォシュレット付トイレ)
入居者の希望によりウォシュレットを付けた
たいていは帰宅後食事前に入浴
これらの多くは大家さんの提案だが、開設前にいろいろなグループホームで体験入居した入居者の体験も基となっている

便利な点(特徴)
・各居室にトイレ、バス、キッチン付
・居室5,6は女性用なので奥まっていて、入り口をカーテンで仕切るようになっている
実際にカーテンは使用したことはない
居室4は、女性入居者の居室としても利用できるように、少し奥まっている
・玄関に続くオープン型の台所、食堂
外出、帰宅時の入居者の様子をうかがうことができる
玄関と食堂の間を壁で仕切ろうかとも考えたが、やはり直接つながる方がよいだろうということになった
・体験入居室は浴室のみ付
入浴介助が必要な人も体験入居できるようにトイレは付けず、居室のものより浴槽を広めにした
普段は職員が浴室を使用
・ベランダなし
外から見てあからさまに集合住宅と分かってしまうので付けなかった
・場所的に便利
徒歩5分以内にコンビニエンスストア、スーパーマーケット、郵便局、レストラン、駅この様なものは地域の中で暮らすにはとても重要なものである
・グループホームと大家宅へそれぞれのアプローチを持つ
大家さん夫婦と4人の入居者は作業所でも顔を合わせるので、できれば大家さん住居は別棟にしたかったが、土地が狭く無理だった
幸い敷地への道が2本あったのでそれぞれに利用している
・基礎工事をしっかりやった
元々地盤が弱かったので、杭を50本打った

不便な点
・大家さんとしては職員の部屋が狭すぎた(これ以上広くできなかった)
職員としては、仕事として来て部屋では寝るだけなので気にならない

その他(グループホームに関する意見) 使い勝手が重要であって、広ければよいというわけではない
どれだけ環境を整えてあげられるかが問題である

「グループホーム 未来」の基本的な考え方について

全ての人々に、『自由に発言し、自由に行動し、楽しく生活する』という権利が与えられている社会の中で、いま、私達の仲間(障碍者と呼ばれている人達、以下「仲間」という)は、必ずしも、自由な生活を保証されている訳ではありません。
この「仲間」が、自由で楽しい自分の生活をおくり、また、人としての充実した人生を過ごせる場所として、グループホーム(「仲間」が数人で共同生活をする時に食事の世話などの生活援助体制を整えた形、以下「グループホーム」という)を設置・運営することにしました。

「グループホーム 未来」は「仲間」ひとりひとりの生活を尊重し、「仲間」が『自由に発言し、自由に行動し、楽しく生活する』ことが保証される援助ができるように運営を進めていきます。
また、「仲間」ひとりひとりが『地域のなかで、自立した生活をおくる』ことを目的として、生活全体のバランス……グループホームが生活の全てではない……を「仲間」自身が選び、決定していくように援助します。

「グループホーム 未来」は、共同生活の場所です。ひとりひとりの生活を大切にしながら、【ともにくらす】ことも、とても大切に考えています。
[自由]
?@ 「自分の居室」には、いつでも出入りができる
?A 友人・知人、いろいろな人が訪問できる
?B 好きなときに食事ができる(相談・援助体制づくり)
[権利]
?@ 運営は入居者自治による
?A いつでも必要な援助が受けられる
[規則]
?@ 共同生活をする上での常識的な約束ごとは守る
?A 「仲間」に迷惑をかけない

「グループホーム 未来」での生活を通して、「仲間」が、今よりも生活のはばを広げ、いろいろな人や事柄に接して、大きく成長して欲しいと願っています。












































































































































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