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グループホームの住まいに関する調査研究報告書


    グループホームの住まいに関する調査研究 3 横浜国立大学 大原一興 横浜市内における知的障害者グループホームのケーススタディー調査 −報告書− 1998年1月 横浜国立大学工学部


      グループホームやまゆり

1-概要

住所 横浜市中区末吉町3-58ラヴィー浜102

電話/FAX 045-262-5795

開設年月日 1991年9月

運営の主体 グループホームやまゆり運営委員会

支援、後援団体 なし

定員 5名

入居者数 男性1名 女性4名

建物形態 軽鉄3階建アパート 1階全部分2階一部

運営方針
親元から離れて、地域の中で自立して生活をする
(自己決定ができるようにする)
1. ひとりひとりを大切にし、1人の大人として認める
2. いろいろな体験をすることにより、社会のルールを体得し、また日常生活をしていく上での力をつける
3. 仲間と共同生活をすることにより、相手を思いやる心、助け合う心を養う
4. 町内の行事などに参加し、地域の人と仲良くする
“自立”とは、全部自分でやるという意味ではない
あくまでも自然に無理なく
指導、訓練ではない

2-開設まで〜現在に至る経緯

開設経緯 大家さんがアパートを立て替えるとき、地域作業所を作ることを考え在援協に相談に行ったところ、グループホームを作ることを提案され、作ることにした
そこでその話が入居者の通う授産所に来て、興味を持った親12人が保護者会を作り、グループホームの勉強を始めた
同時に障害者地域活動ホームを借りて宿泊を始めた
3ヶ月後 3LDKのマンションを同じような団体と借り、日にちを調節しながら利用する
この頃から12人全員で宿泊する形から5〜6人単位の小グループにし、組み合わせも変えながら、週1回宿泊を続ける
6ヶ月後 入居したい人が決まり、職員候補の人と週2回宿泊を行う
9ヶ月後 開所

改築状況
自閉症の入居者のために、共用空間と個人の空間との分離をはっきりさせる必要があったので設計段階から関わった
新築する際、同時に改造した

工場での組立て式アパートなのでグループホーム用に改造するのは大変だったが、大家さんと建築会社の人が協力してくれた
・1階 1室は1Kのまま残したが、3室分は完全に改造
・壁を抜き、新たに居室を作るため壁を作る
・トイレ付のユニットバスではなく、トイレは別にし、大きめの浴槽にする
・1Kの台所は狭いので、大きい物にする
・居室2と食堂を行き来できるように、ドアを付ける

地域との関わり
・開設当初
驚かれたり、近隣住民とのトラブルや、誤解を受けたこともあった
・アパート内では、外階段を静かに歩けず苦情がきたり、2階の入居者が一般賃貸の部屋を開けてしまった
・庭にごみが投げ込まれた家があり、入居者がしたのではないかと誤解された
しかし、入居者の顔を覚えてくれた近所の人の中には、グループホームと反対方向に歩いている入居者を心配してくれたり、自閉症の以外の入居者は声をかけてもらったり、交流が始まった
・現在 グループホームがここにあることが、地域にとつて自然なこととなる 町内会に入っており、祭りなどの行事に参加する
・地域にはごく自然に認めてもらいたい

現在の居室状況までの経緯
・1991年開設当初
自閉症の入居者には完全に孤立した空間が無いと落ち着く事ができないので、入居者Eは2階1Kの居室になる
入居者Dは自閉症だが女性なので、外階段や夜が,心配だったため1階の居室(現在の職員室)になる
・1994年3年後
入居者Eを見ていた入居者Dが自分も1Kの居室で生活したいと希望し、2階の居室4へ移動する
自閉症の入居者には、孤立した自分の空間が必要であった
(居室で歌を歌ったり踊ったりして、ストレス発散ができ、とてもよい結果となる)
・1997年現在
入居者Cも1Kの居室で生活がしたいという要望があったところ、偶然もう1部屋空きが出て、居室3へ移動する

3-生活

生活日課 食事は用意されたものを各自が自由に食べる

土日 閉所
土曜日に全員帰省する
現在は入居者の親も元気だが、将来的には、土日もグループホームで過ごせたらと考えている
祝日はグループホームで過ごし、夕食は各自が自主料理を作る

行事
・夏に旅行
積み立て貯金の使い道として、入居者自身が計画
(自分の貯金を楽しんで使うことにより、金銭感覚を身につける)
・外食をする
始めは自分の好きなものを注文することもできなかったが、今では皆楽しみにしている
・カラオケに行くなど

生活状況
・洗濯は各自でする
始めは洗濯機の使い方を覚え、それが楽しくなり、現在は全員が各自で洗濯機を所有している
・各居室で使用する、トイレットペーパー、電球などは各自で買いに行く

余暇活動
・毎週火曜日、日本舞踊を習いに行く入居者がいる
町内に住む運営委員の1人が教えてくれる
・それぞれ、いろいろな趣味を持っていて忙しい
社交ダンス、ピアノ、カメラ、バドミントン、編み物、喫茶店のお手伝いなど

お金の管理
・家計簿と称した小遣い帳をつけている
・入居者全員がそれぞれに積み立て貯金をしている
数字の大小は、自閉症の入居者のみ分かる
使いすぎる人はいない
銀行で自分でカードを使いおろすことができるのは1名のみ

4-職員

職員数 常勤 2名(女性)

勤務時間 15:30〜翌10:00 宿直の日
15:30〜20:30 宿直外の日
15:30〜20:30は、常時2名
忙しい日(月、火、金曜日)はアルバイトを含め3名

職務内容 自己決定できるための支援

ボランティア アルバイト アルバイト 3名
基本的に宿直はなし
職員と同じように、入居者と全般的に関わる

職場等との折衝
連絡帳のやり取りのみで、特にはない

家庭との関わり
特になし
(帰宅時に、入居者が少しずつ自立し始めているのが親にも分かり、親、特に父親が、よりグループホームに協力的になった)

5-入居者

主な収入 年金+仕送り
親が年金生活になったら生活保護を受けるしかないが、年金+生活保護で生活できる範囲である

グループホーム生活による変化
・衣類以外の買い物はすべて各自でするようになる
空になった容器など持っていき、同じ物を買う工夫をしている
・行き付けとなった歯医者、美容院などへ1人で行けるようになる
・自閉症の入居者は、人とふれあう楽しさ、大切さが分かるようになる
・洗濯機のスイッチが押せるようになり洗濯が楽しいと思い始め、現在では全員が各自の洗濯機を持ち、自分で洗濯する
(開設当初は、1人で入浴することができない人もいた)

6-建築形態

構造、形態 軽鉄3階建アパート 1階全部分 2階一部(1K3部屋分)

規模 延床面積 108.8?u

建築年数 7年(1991年開所時新築)

権利関係 賃貸借権

家賃 月414,000円

建物概要
・居室 5室(うち3室は完全な1K型)
・職員室
・台所
・食堂
・テレビスペース
・浴室 5ヶ所
・洗面所 5ヶ所
・トイレ 6ヶ所
各部屋エアコン付き

共有空間
・食堂
以前共有空間はここだけだったのでとても狭く、ゆっくりとくつろぐ事ができなかった

・テレビコーナー
ここができてから、ゆっくりとテレビを見たり団らんする事ができる

居室
・家具は各自で持ち込み
洗濯機は各自で所持
開設当初は1台を全員で使用していたが、だんだんと洗濯を楽しむようになり、現在では全員が持つ
・各自が専用の浴室、トイレを持つ(居室1の入居者は職員と共用)

便利な点
・2階が1Kの個室である
プライバシーが守られる
(特に自閉症の人にとっては、完全な自分だけの空間が必要となるので)
もし入居者が退所しても、1Kのままならばそのまますぐに大家さんに返すことができる
・浴室5ヶ所、トイレ6ヶ所ある
各自が自分専用にしている
掃除は大変だが、入居者がそれぞれ好きなときに使用できてよい
・エアコンが各居室に作り付けである
・アパート全体が、ガスでなく電気である
とても安全である
土曜日の朝食は、各自が各居室で、好きなものを調理している
・混合水栓である
以前は自分で高温水と冷水から調節しなければならなかったが、危険な上入居者には無理と分かったので、変えた
・団らんの場がある
以前は食堂のみだったので、狭くてゆったり団らんすることができなかった
・場所的に便利である
駅から徒歩2分
週辺に、店、コンビニエンスストア、レストラン、病院(隣り)、美容院などすべてあり、自立しやすい
障害によって好みの店が違う
(自閉症の入居者は、店員との対応の少ないコンビニエンスストアを好むが、店員との会話を楽しむために店に行く入居者もいる)

不便な点
・外階段を静かに歩くことができず、うるさいと苦情がきた
スポンジ底の靴を履くことで対処
・作り付けのエアコンの温度調節が、数字が分からない入居者には困難である
色などで識別できるものがあると便利

その他(グループホームに関する意見)
・居住条件が入居者の生活の質を決める大きな条件ではないだろうか、と考えいる
入居者はずっと集団の中でいることを教えられてきているので、自由、自我を出せる環境を整えてあげる事が重要である
・グループホーム生活によって自立心、独立心が高まっていく入居者の変化に応じて、居住条件を変えていかなければいけない
・入居者の障害、性別、年齢別の要求の違いに対応しなければならない























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