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グループホームの住まいに関する調査研究報告書


    グループホームの住まいに関する調査研究レポート 2 宮城工業高等専門学校 建築学科 本間敏行


      まとめ

調査したグループホームは各々始まってまもないため、世話人と居住者が一緒になって新しい生活のリズムをつくっている最中である。ホーム入居前の施設生活と比較すれば良い面が多いためか、大きな問題点はまだ示されていない。居住者はグループホームでの生活に満足しており、施設に戻りたくないと言っている。
生活に馴染んでからグループホームに対する住要求が顕在化すると思われる。以下、事例を通して伺える空間的な諸特性と課題を列挙した。

*居住者同志の人間関係と世話人との相性が成功の秘訣となっている。既存家屋利用の場合、間取りや部屋数に応じての部屋決め、使い方予測がポイントとなる。既存の家屋では個室化した場合、押入や収納の大きさが部屋で異なる問題がある。
*必要家具は洗濯機、冷蔵庫、食器だな等共通の家具と布団、ベッド等個人用家具に分れるが、個人用の家具で生活条件が変化する。たとえば、個人別テレビの所有を認めるか否かで個室への引きこもり方が異なってくる。
*続き間は部屋の使い方とは関係なく、開け放して生活している場合が多い。
*洗濯物の干す場への計画的な配慮が必要である。個人毎に管理しているために洗濯物が居室の雰囲気を損ねている例が多い。
*ほとんどの居住者がラジカセを所有しているなど私物も共通しているものが多いが、趣味の物など多様化も進んでいる。年齢、性別に応じて個の領域を形成し、個々人の生活を自分たちで可能なかぎり選択して楽しんでいる姿が目につく。
*グループホームを意図した新築の場合、建設費用に苦慮しているが、まず個室の確保を第一義に計画している。個室として同じ空間条件になるよう配慮している。事例をみると、 1人あたり20?uを超えると個室型の住生活となっている。30?uを越えるとかなり豊かな空間条件といえる。
*住み方は空間により規制されているが、暮らしぶりや雰囲気は居住者の主体条件とともに世話人の個性が大きく関係していることが伺える。
*世話人の形態が隣居型の場合、家族全体の全面的な理解と協力が欠かせない。家族全体で引き受ける覚悟がいることが示された。隣居型でも世話人は殆どの生活がグループホームに規制されている。また、今回の調査では同居型を十分調べられなかったが、世話人たちとの会話を通して、同居形態の困難さが推測できた。
*地域との関係をみるとホームを開始してからは反対運動など大きなトラブルはなく周りにとけこんでいる。近所付き合いは、挨拶する程度のグループホームが多く、積極的な交流は今後の課題となっている。

謝辞:複数回かつ長時間にわたる調査に協力頂いた、グループホームの居住者、世話人、並びにバックアップ施設の職員皆様に感謝の意を表します。
なお、本調査研究は中村良子(東北工業大学建築学科大学院生)と共同で実施したものである。

[参考文献]
?@本間敏行・志田正男・中村良子・笹本剛 知的障害者グループホームの建築計画的研究 日本建築学会東北支部研究報告集第59号 1996年6月

?A本間敏行・志田正男・中村良子・笹本剛 知的障害者グループホームの建築計画的研究 その2 日本建築学会東北支部研究報告集第60号 1997年6月

?B本間敏行・志田正男・中村良子・笹本剛 グループホーム等の概要と居住者主体条件特性 知的障害者グループホームの建築計画的研究 その1 日本建築学会大会学術講演梗概集 1996年9月

?C本間敏行・志田正男・中村良子・笹本剛 平面構成と住み方特性 知的障害者グループホームの建築計画的研究 その2 日本建築学会大会学術講演梗概集 1997年9月

?D中澤健編著 グループホームからの出発 中央法規 1997年4月

?E厚生省大臣官房障害保健福祉部障害福祉課監修 地域で暮らす−精神薄弱者の地域生活援助− 中央法規 1997年1月

?F厚生省児童家庭局障害福祉課監修 グループホームの設置・運営ハンドブック−精神薄弱者の地域生活援助− 日本児童福祉協会 1989年6月

?G厚生省児童家庭局障害福祉課監修 精神薄弱者の地域生活援助 日本児童福祉協会1991年5月






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