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グループホームの住まいに関する調査研究報告書


    グループホームの住まいに関する調査研究レポート 1 北海道大学 野口孝博


      北海道における知的障害者向けグループホームの居住実態

1. はじめに
高齢者、障害者がお互いに助け合いながら自立した生活を送れるようにするグループホームは、これからの居住形態として考えられる。特に北海道のような北国では、暖房や雪処理などにしても 集まって住むことの魅力は温暖地以上に大きなものがあり、グループホームのもつ意味は特別である。
現在北海道では高齢者、障害者向けにいろいろな形態のグループホームが生み出されている。そのうち、ここでは知的障害者向けグループホームをとりあげ、その運営方法、住居形態、および居住実態について報告する。
現在道内の知的障害者向けグループホームは、 18市28町3村にまたがり、 136カ所ある(平成8年度現在・道把握分)。これらを対象にして、その居住実態を把握するためのアンケート調査とヒヤリング調査を実施した。ここでは実際に訪問して観察・聴取調査を行った3件のグループホームの居住実態について報告する。またアンケート調査の結果を一部利用して、北海道のグループホームの一般的傾向にも若干ふれる。

2. 調査方法
136カ所の知的障害者向けグループホームのうち、126カ所を対象にしてアンケート調査を行った。調査は郵送による配布、回収方式で、有効回収数は79件、有効回収率は62.7%である。調査内容は、グループホームの運営方法、住居の立地条件、住宅形態、住まい方、世話人の生活形態と仕事内容、居住者の住みごこち評価、グループホームに対する評価・要求など。
調査方法としては、運営方法や入居者属性、住居の維持管理などについてはグループホームのバックアップ施設に答えてもらった。また、住宅の居住性能、使い勝手、住みごこちなどについては入居者の意見に従い世話人などに代弁をしてもらう形をとった。またヒヤリングは、札幌市内および近郊のグループホームのうち、それぞれの居住形態を代表する3事例を選定して行った。調査実施時期は1997年8〜10月である。

3. 北海道のグループホームの居住形態の概要

(1) 住宅について
住宅の形態は、一戸建住宅が圧倒的に多い。全体の約80%(79件)が一戸建住宅である。その大半は2階建形式である。残りの8件はアパート、マンションなどの集合住宅となっている。希望の住宅形式をきいたところ、同じように戸建を望むものが60%以上あった。やはり戸建住宅の方が使いやすいのであろう。
これには住宅規模の影響も大きいと思われる。住宅の規模としては、80〜180 の範囲に大半が含まれる。このうち集合住宅は100 未満の小規模のものが多い。100 以上の住宅はほとんどが一戸建である。

住宅規模について希望をきいた。それによると、140〜180 の大きさを望むものが約半数を占める。こうした大きさの住宅を現状の集合住宅で探すのは無理である。戸建でもそう簡単ではない。戸建でも大きな部類に入るのである。現在のグループホームが抱えている課題の一つがこうした点にもうかがえる。

住宅の室数は、LDK部分を除いて4〜5室という例が多い。すなわち4LDK型ないしは5LDK型の住宅である。入居者は通常4〜6人で、一人1室が標準になっていることを考えると部屋数にはほとんど余裕がないことがわかる。事実各グループホームの要求では6室以上の部屋数を希望する例が約80%を占めている。

平面構成は、北海道特有の居間中心型のプランが多い。この平面型は、真ん中の大きな居間(LDK)を中心にそのまわりに小部屋を並べている。そのため暖房効率がよい反面、部屋のプライバシーが確保しにくいというマイナスがある。特に居間に隣接する和室(たいてい1室はある)は、間口1間か1間半のふすまによって仕切られているだけなので、個室としては使いづらい。一般の住宅ではそこを居間の延長部分として利用しているためにほとんど問題はない(というよりも余裕空間としてむしろ評価されている)が、グループホームで個室利用を前提とする場合には課題が残る。

住宅の所有形式は、借家が多い。全体の72%(51件)が借家である。次いで運営主体が所有というものが23%(18件)を占める。

(2) 世話人について
各グループホームにはふつう一人の世話人がついている。世話人は大きく分けて通いの場合とホームに一緒に住んでいる場合とがある。今回の調査では、世話人常駐型のグループホームが約半数を占めている(79件中41件)。この場合世話人の居住形態としては、グループホーム内に世話人専用の部屋が確保されているもの、住宅が世話人所有で1階にグループホーム、2階に世話人家族というように階で分離しているものなどがある。
非常駐型の場合は、世話人はおおむねグループホームから1km以内に居住している。この場合、朝夕定時に通勤している。
いずれの場合も世話人は女性である。年齢は、20才代から60才代まで幅広く分布しているが。中心は40〜50才代である。
世話人の仕事の中心は食事の準備である。この調査でも食事の世話を受け持っているケースが大半を占め、食事を作らないという例は2例にすぎない。食事の準備は、朝食と夕食朝の2回行っている例が42%、朝、昼、晩の3食準備(弁当を含む)が48%を占めている。休日や世話人の休みの日には、入居者自身が行っているところが多い。なお、世話人はこのほかに買い物、金銭面の管理、入居者の健康管理、通勤・通院援助、日常生活全般の相談など多くの仕事を引き受けている。

4. 三つのグループホームにみる居住形態
ここで報告する3つのグループホームはいずれも近年札幌市内及び近郊に設置されたものである。戸建、アパート、マンションの3タイプで、世話人はいずれも通いタイプである。






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