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知的障害者福祉研究 報告書


    ビデオ「街に暮らす」 日本編制作に伴うヒアリング調査


      剣淵北の杜舎

「剣淵北の杜舎」(入所授産施設) 説明:横井寿之施設長

剣淵北の杜舎は、就労前訓練を目的として1993年4月に開設された授産施設である。地域の産業と連携できる作業科目を設定して、農業科、窯業科、農産物加工科を中心に作業を行い、将来地域で生活できるような必要な援助に取り組んでいる。
また、その居住空間としては、入居者の個人生活を大切にするために、全室個室とした。
全国的にも例を見ない全室個室による利用者のプライバシーの保証と処遇の個別化を基本としているが、この視点は同時に「施設」という集団の限界を鮮明にしたともいえる。このようなことから、西原の里(剣淵西原学園(更生施設)、剣淵北の杜舎等の総称)では、障害者の生活と権利の保障という観点から、施設のもつ限界を明確に意識し、施設の将来の方向性を明らかにしていきたいと考えている。
また、西原の里は、「地域の文化と経済の振興に寄与する」という運営の基本方針を掲げており、農業科、窯業科、農産加工科や北の杜舎の分場(ワークショップ風)を拠点に、障害者援助の活動を通して、芸術的・文化的な活動を地域に作り出し、地域の無農薬農業者とともに地域の農業の振興に寄与する施設運営のあり方を実践している。
現在、北の杜舎の利用者は、男性、女性各25名(50名定員で現在在籍者40名程度)全室個室(建築費総額6億円)あるが、2階が軽い人、1階が重い人という編成になっている。障害の判定は重度と軽度の人が半々程度。施設の中では男女混合である。
個室にしても、それぞれの個別性に応えるには限界がある。現在定員50名だが将来的には30名にしたいということである。
個室ということで直接的に効果があるということはない。それは、逆にいえば施設内でそれに見合った処遇理念がないと独房になるということである。
外出、買物に行きたいという要望は全部聞くようにしていている。夜間でも定期バスを出すようにした。
ただ、個室によりプライバシーが守れるということだけでも、精神的にかなりの安定感をもたらした。
また、個室化は障害の重い人にとって、非常に効果があった。それは複数の人がいる中で、パニック等になったとき、まわりの人が寝られない。これを個室にすることでうるさくても寝られるのである。
地域の農業振興にも寄与しており、現在農業科の収入が一番大きい。将来的には生徒が作った野菜を加工して出荷できるようにしたいという考えをもっている。

西原の里では、施設の中での生活訓練には限界があるという意識のもと、まだ制度的な保証がない1984年に、一軒家を借りるというかたちで地域生活への取り組みをスタートさせた。
現在、西原の里では計4ヶ所のグループホームを支援している。

■西原の里がバックアップするグループホーム

◎あかつき寮
・1988年地域内自立寮として開設。1989年国認可。入居者4名。

◎いずみ寮
・1990年国認可。入居者4名。

◎あけぼの荘
・1984年士別市でスタート、その後剣淵に移る。1994年国認可。入居者4名。

◎とも2ホーム
・1991年開設。1992年国認可。入居者4名。

◎生活実習寮(無認可)
・施設に併設した住居1ヶ所と施設の敷地外に建てた住居1ヶ所で、数名の人達が少人数での生活をしている。






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