1. 障害者福祉の世界の動向は、1960年代より世界的に展開したノーマライゼーションの理念に見られるように、障害者を隔離、収容するのではなく、地域の中で障害のある人も共に生活する方向へ進んでいる。
2. 我が国でも障害者プランが第一の理念として「地域の中で共に生活する」と謳っているように同じ状況にある。
3. 我が国の動向が欧米先進国(英米、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、デンマーク、西欧等の国)と異なる点は、欧米の国々が収容施設を20世紀前半に作り後半に「地域へ」という動きを展開したのに対し、我が国は1960年代より一方で隔離、大規模化していない入所施設を作り、他方で乳幼児よりの早期対応、学校教育、仕事の場、グループホームなどの地域のサービス資源を作ってきた二面性にあろう。
4. 現在の急務は、後者の地域サービスを「地域で安心して生涯を暮らせる」ように整備することである。地域のサービスは、乳幼児への早期対応、学校教育については一応の制度が整った。今後は、普通の人々と比較し劣悪な生活環境に置かれている入所施設居住者が地域に戻れるサービス、学校卒業者がそのまま地域で安心して暮らせるサービスを展開する必要がある。
5. 今後の地域サービスに必要な事業は、以下の5点である。
(1)地域の中で健常者と共に働ける仕事の場の保障(地域生活者のほぼ半数が仕事の場を持たない。働く場が障害者のみの隔離された場所になっている)
(2)グループホームや単身、夫婦生活者等の地域の住まいの保障(グループホームは、入所者10万人に対し1万人へとなりつつあるが、数が圧倒的に少なく、援助の制度も改善しなければならない、という課題がある)。
(3)余暇活動への参加に対する援助(普通の人々が利用している地域社会資源の利用)
(4)家族支援(レスパイトサービスを中心とした家族への援助)
(5)地域で生活している人々とその家族が相談でき、支援され、人権を擁護される生活支援センター(これらのセンターは、現在多様な形でスタートをきった段階である。)
6. これらの地域サービスを実現するためには、これまで知的障害者の入所、通所施設を運営してきた民間の社会福祉法人等が地域サービスに向けてはっきりと方向を転換すること、また知的障害者のサービスについては窓口業務のみに関わってきた地方自治体が知的障害者を住民(市民)として受け入れそのサービスを計画し、実行する責任を持つこと、この双方の努力が必要である。
7. これらの「地域で暮らす」動向は、当然本人の意思の尊重が必要であり、本人活動が重要視されなければならない。
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