日本財団 図書館


知的障害者福祉研究報告書
平成8年度調査報告


第2章 国内調査

1 地域生活援助ヒアリング II

野の花ホーム

野の花ホーム 吉清一江氏

訪問日: 平成8年10月18曰(金)
所在地: 川崎市多摩区菅稲田堤3-5-3
訪問者: テレビマンユニオン 池田
      福祉開発研究所 宮森(敬称略)

「野の花ホーム」は女性4人の生活ホームで、1年前に建てられたもの。生活ホームについては、まだ内容が知られていないので、宣伝のために廣瀬貴一先生にも講演してもらい、アンケートをして本を作った。

地域生活を送ることは、自宅に居ればできるが施設に入ってしまってはできない。生活ホームは、自宅以外の形で地域で暮らす手段となるものだ。4人で世話人の人を雇い、親元から離れて年金と工賃で生活しながら、生まれた町で暮らすものである。それは、その人の生き方のステップとしてあるもので、そこから独立した人もいれば、また親元に戻った人もいる。地域で暮らすということは、できることも厳しいこともある。また、入居している人の相性の問題もあるので、ホームを変わることもできる。
親の心は「死ぬまで自宅」という気持ちが多いと思う。生活ホームを知って、迷っている。親との同居はトラブルもあるし、離れるまではわからない。生活ホームを作っているグループもあれば、調べるグループもある。

生活ホームは東京都と川崎市では就労の要件がない。川崎市では1ホームあたり月に12万円の補助が出る。「野の花ホーム」は建て売り住宅で、月16万円の支払いが必要になる。川崎市からの12万円の補助で足らない4万円はみんなで負担する。生活費は一人5万円、それに私(吉清氏)が3万円出して、23万円で食事・光熱水費をまかなっている。入居している人は障害基礎年金が月に6万5千円と工賃が1〜2万円あるので、交通費とお小遣いができる。就労している人ならば生活ホームではお金が貯まる。

食費は28,000円ぐらい。世話人が負担するのは食費と部屋代。私の収入は市からの補助が一人あたり60,000円×4人分、合計24万円である。難しいのは定員が空いてしまうとその分の費用が出て来ない。例えば入院したような場合は費用が出ない。また、入院も6か月以上になると入居者の登録がなくなってしまう。

生活ホームは現在市内に27か所あり、21か所は親の会が開設・運営している。野の花ホームも親の会である。独立した生活ホームもある。生活ホームの制度ができる以前からあったものだ。
川崎市の親の会は力が弱いので、生活ホームごとに運営委員会を作っている。運営委員会はスタッフの有志で行い、作業所がバックになっている所もある。2法人が作業所と通所授産施設を行っている。

友人が作業所をしていたので、作業所のバックアップでも良かったのだが、個人で開設した。私はこれで4か所目になる。作業所がバックアップするものは年間4〜5か所開設されている。川崎市は財政難のために、年3〜4か所の補助になってきた。川崎市では施設ができない。今年は6か所が候補に上がり、市は3か所を認可した。

地域で生きるポイントとして作業所がある。川崎市の場合、無認可の作業所が地域に点在している。それらは親の人たちが作ったもので、行政は認可施設に合わない人たちの一種の安全弁として使うぐらいであった。今でも地域の拠点は作業所である。ここの入居者の人たちも「赤い風船」という作業所の人たちと仲良くしている。「赤い風船」もまた別に2か所の生活ホームを運営している。近所づきあいもある。買い物もする。近くの人や友達を呼んで場所を開放することもある。生活ホームでは、自分のペースで地域の中で普通に暮らすことができる。

この仕事について10年が過ぎた。ここに移って1年目だが、古い人は9年目の人もいる。入居者の移動もあった。たまたま遊びに来てから自分で希望した人もいる。最初の頃の人たちは入所待機の人とか、他に行けなくなると困るといった人もいた。

今をして思えば、1つの生活ホームに4人という人数は多いと思っている。私は3人ぐらいが良いと思う。なぜなら、日本は3LDKの住宅やマンションが多い。4人が個室を持つとなると、それに合う住宅がなかなか見つからない。3LDKなら沢山ある。地域的な条件があるとは思うが。公営住宅のグループホームは4人には狭いと思う。

生活ホームを作った当時の問題は、家族で住みたいという気持ちが大きかったことだ。それまで自分で決める習慣が少ない。自分で考えるステップとして考えて欲しかった。親は本人のトラブルがイコール親の問題となり、彼が大人になることがない。彼と同じ年齢の人がどんな暮らしをしているのかを知らない。大人としての自覚、希望が大切になる。親とのトラブルから、学校を卒業したらすぐに生活ホームに入る人もいる。

川崎市には世話人2人体制を要求している。親の会は、肢体不自由・自閉症・知的障害の団体が一緒になり、作業所や在宅サービス、デイサービス施設などを現場の意見を聞くように働きかけている。

若い親たちの考え方も変化してきている。施設はすべて悪かと言えば、建物も小舎制になったり、施設の中だけで完結した生活から地域へと出て行ったり、地域の人たちを呼び込むことなど、施設もいずれは変わらざるを得ないと思う。

世話人もあたりはずれがあると言われる。最初の頃は施設や作業所のスタッフ、養護教師、親が多かった。今は他の経験のある人も多くなっている。男性もいる。ただし、世話人の人はホームの生活時間が自分の家族と同じなので、家族の負担がある。




川崎市精神薄弱者生活ホーム設置運営要綱

(目 的)
第1条 この要綱は、地域で生活することを望む精神薄弱者の自立生活を促進するために必要な援助等を行う精神薄弱者生活ホーム(以下「生活ホーム」という。)の設置及び運営に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(設置及び運営主体)
第2条 生活ホームの設置及び運営主体(以下「設置者」という。)は、社会福祉法人又は財団法人(以下「法人」という。)とする。
2 生活ホームを設置及び運営しようとする法人は、あらかじめ生活ホームの設置運営に関する協議書(第1号様式)により市長の承認を得るものとする。
3 設置者は、生活ホームごとに地域代表者等で構成される運営委員会を組織し、生活ホームの運営にあたる責任者(以下「責任者」という。)を選任しなければならない。
(入居対象者)
第3条 生活ホームの入居対象者は、満15歳以上の精神薄弱者で、次のいずれにも該当する者とする。
(1)日常生活の援助を受けないで生活することが、可能でないか又は適当でないこと。
(2)数人で共同の生活を送ることに支障がない程度に身辺自立ができていること。
(3)就労(福祉的就労を含む。)しているか、又は障害者地域作業所若しくは精神薄弱者援護施設等に通所していること。
(援護の実施機関)

第4条 生活ホームの入居に関する援護は福祉事務所長が行うものとする。
(生活ホームの定員)
第5条 生活ホームの定員は、1生活ホーム当たり、おおむね4名とする。
(設置の基準)
第5条の2 生活ホームの設置については、次の基準によるほか、入居者の保健衛生及び安全の確保を図らなければならない。
(1)設置場所は、緊急時等においても責任者等が迅速に対応きる距離にあること。
(2)生活環境に十分配慮された場所にあること。
(3)建物等については、法人又は責任者が所有権又は賃借権を有すること。
(4)設備は、日常生活を支障なく送ることができるもので、世話人が入居者に適切な援助ができる形態であること。
(5)個々の入居者の居室の床面積は、1人用居室にあっては、7.4?u(4.5畳)以上、2人用居室にあっては、9.9?u(6畳)以上とすること。
なお、1居室当たり2人までとすること。
(6)居間、食堂等入居者が相互交流できる場所を有していること。
(世話人の配置等)
第6条 生活ホームには、専任の世話人を配置しなければならない。
2 世話人は、精神薄弱者の福祉の増進に熱意を有し、精神薄弱者の日常生活を適切に援助する能力がある者とする。
(生活ホームの運営)
第7条 設置者又は責任者は、入居者個々の状態・能力等を把握し、指導方針を定めるとともに次に掲げる業務を行うものとする。
なお、(2)、(3)、(5)、(6)の業務については、その全部又は一部を世話人に行わせることができる。
(1)世話人の選定及び世話人の代替要員の確保
(2)入居者に対して食事の提供、健康管理・金銭管理の授助、余暇利用の助言等日常生活に必要な援助を行うこと。
(3)緊急時の対応、職場等における問題への対応等入居者に対し必要な援助を行うこと。
(4)世話人の指導、監督、援助、研修を行うこと。
(5)入居者の生活状況、食事の内容等に関する記録を行うこと。
(6)入居者負担金を徴収し、それを適正に処理するとともに、これに関する諸帳簿を整備すること。
(入退居の決定等)
第8条 生活ホームへの入居を希望する精神薄弱者又は保護者は、生活ホーム入居申請書(第2号様式)により福祉事務所長に入居の申請を行うものとする。
2 生活ホーム入居申請書を受理した福祉事務所長は、必要により入居を希望する精神薄弱者の申請に基づき、申請者の希望する生活ホームの運営主体の意見を勘案するとともに、児童相談所長又は障害者更生相談所長の判定結果等をもとに入居を決定するものとする。
3 前項により、入居を決定したときは、福祉事務所長は、生活ホーム入居決定通知書(第3号様式)により申請者及び設置者に通知するものとする。
4 設置者は、生活ホーム入居者の退居が適当と認めたときは、生活ホーム退居意見書(第4号様式)にその理由等を記し、福祉事務所長に提出する。
5 前項の意見書を受理した福祉事務所長は、その内容を審査し、退居が適当と認めたときは生活ホーム退居決定通知書(第5号様式)により入居者又は保護者及び設置者に通知するものとする。
(入居者及び世話人の負担)
第9条 生活ホームの入居者及び世話人は、飲食物費及び共益費等の必要な経費を負担するものとする。
(帳簿の整理)
第10条 設置者は、設備、会計等に関する帳簿を整備しておくものとする。
(費用の支弁)
第11条 生活ホームの設置費及び運営費については、別に定めるところにより川崎市が支弁するものとする。

附 則
この要綱は、昭和60年4月1日から施行する。
附 則
この要綱は、昭和61年4月1日から施行する。
附 則
この要綱は、昭和62年4月1日から施行する。
附 則
この要綱は、昭和63年4月1日から施行する。
附 則
1 この要綱は、平成3年4月1日から施行する。
2 第5条の2第5号については、当面、平成3年4月1日以降新設されるホームについて適用する。

川崎市精神薄弱者生活ホーム設置運営事業補助金等交付要綱

(趣旨)
第1条 この要綱は、別に定める川崎市精神薄弱者生活ホーム設置運営要綱に基づく精神薄弱者生活ホーム(以下「生活ホーム」という。)の設置及び運営に要する経費に対し、市が補助金及び入居委託費(以下「補助金等」という。)を交付することについて必要な事項を定める。
(補助等の対象)
第2条 この補助金等の交付の対象となる事業は、生活ホームの設置及び運営に係る次の事業とする。
(1)生活ホーム設置事業
社会福祉法人又は財団法人(以下「法人」という。)が市内に生活ホームを設置する事業
(2)生活ホーム運営事業
ア 法人が市内に設置した生活ホームの家屋賃借料に対する補助事業
イ 市が精神薄弱者の援護を生活ホームに委託する事業
ウ 財団法人川崎市心身障害者地域福祉協会(以下「地福協」という。)が、設置運営する生活ホームの運営指導監督にあたる職員を設置する事業
エ 地福協が生活ホームの世話人等に対し実施する研修事業
オ 法人が世話人の休暇等における代替要員を雇用する事業
(補助額等の算出方法等)
第3条 補助金等の単価、算出方法及び対象経費は別表のとおりとする。
(申請等)
第4条 第2条第1号及び同条第2号ア、ウ、エ及びオに規定する補助金の交付申請は、生活ホーム装置運営事業補助金交付申請書(第1号様式)により市長に対し行うものとする。
2 前項申請書に添付すべき書類は、次のとおりとする。
(1)事業計画書
(2)予算書抄本
3 第2条第2号イに規定する委託費の請求は、毎四半期の当該初月に生活ホーム入居委託費請求書(第2号様式)により市長に対し行うものとする。
4 前項の請求書には、前四半期の生活ホーム入居委託費精算書(第3号様式)を添付するものとする。
(調査)
第5条 市長は、必要を認めるときは、補助金等の交付を受けたものに対し経理等の状況について調査することができる。
(実績報告)
第6条 第4条第1項に規定する補助金の実績報告は、生活ホーム設置運営事業実績報告書(第4号様式)により事業完了の日から起算して30日以内に行わなければならない。
(書類の整備等)
第7条 補助金等の交付を受けたものは、当該事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿を備えかつ当該収入及び支出についての証拠書類を整備保管しておかなければならない。
2 前項に規定する帳簿及び証拠書類は、当該年度の完了の日の属する市の会計年度の翌年度から5年間保存しなければならない。

附 則
1 この要綱は、昭和63年4月1日から施行する。
2 川崎市精神薄弱者生活ホーム入居委託事業要綱(昭和60年4月1日施行)は廃止する。
附 則
この改正要綱は、平成元年4月1日から施行する。
附 則
この改正要綱は、平成2年4月1日から施行する。
附 則
この改正要綱は、平成3年4月1日から施行する。
附 則
この改正要綱は、平成4年4月1日から施行する。





前ページ 目次ページ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION