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知的障害者福祉研究報告書
平成6年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


私たちも、まちの中で生きたい

本牧ダック/生活の家のご案内

*経過・目的*
脳性マヒ者の多くは家で親の介助に全面的に依存して生きているのが現状です。重い障害を持った脳性マヒの両親達は家事や仕事をしながら介助もするのですから無理に無理を重ねて生活しています。そのような環境の中で、在宅障害者の生活はどうしても何もやらずじっとテレビをみているという刺激のないものになりがちです。その上、当り前のことですが、両親は先に死ぬのです。それならばできるだけ若くて元気なうちに親元を離れ、自分の生活を作っていくことに挑戦してみたい、どうすれば街の中で生きていけるのか試みてみたい、こうした障害者の切実な思いから、ふれあい生活の家は、‘84年11月に中区本牧に生まれました。そして、‘89年7月には根岸に移転。‘91年1月には2番目の生活の家、本牧生活の家がスタートしました。
生活の家では脳性マヒ者が共同生活をしながら、実際の生活の中からいろいろな経験を身につけたり、障害者が自分で考え、自分で決めて行動し、その結果については自分で責任を負うような生活を送ることを目的としています。
一方、ふれあい生活の家ができて3〜4年経ったころ、生活に慣れてきた生活の家の障害者にとって大きな課題となってきたのは、地域の中で充実した時を過ごすためにどうすればいいかということでした。多くのハンディを抱えた人たちにとって、今の社会には活動できる場、自分を発揮する場がほとんどありません。無為の時を過ごすしかなかったり、テレビしか楽しみがないという状況は依然として変わっていません。
この地域で生活している障害者が本当に充実していると実感できる日々を送れることを願って、1989年4月、本牧ダックが誕生しました。
本牧ダックは通所者一人一人が自分の障害と向き合い、それぞれの可能性をさがし、やってみたいことを試せるような場であり続けたいと考えています。

障害者地域作業所
本牧ダック
グループホーム
ふれあい生活の家、本牧生活の家

ふれあい生活の家/本牧生活の家

ふれあい生活の家は根岸駅から歩いて5分くらいの交通の便のよいところにあります。開所後7年を経過し、落ち着きのある家としてのふんいきを感じるグループホームです。
本牧生活の家は本牧の山の手、閑静な住宅地の中にあります。1991年1月に開所したばかりで、試行錯誤の中にも活気あふれるグループホームです。

*生 活*

共同生活を円滑に進めていくための最低限の枠として、食事の時間と介助の時間は決まっていますが、それ以外は自分であるいは入居者同士で話し合って決めていきます。
職員の介助は朝6時30分から始まります。朝食は7時30分です。食事は週の予定にあわせて必要な分だけ予約し、一週間分あるいは一ヵ月分まとめてお金を払います。起床時間は各自が食事と介助の時間を考えて決めます。
朝食後、平日は本牧にある地域作業所本牧ダックに通います。本牧ダックでは七宝焼をやったり生活力をたかめる取り組みやグループホームの生活で必要なことをやったりします。入居者の中には近くの作業所にも週1〜2回いく人もいます。
夕食は、7時頃です。夜は入浴があるので、職員のみでなくアルバイトの人やボランティアに来てもらいます。入浴時間は大体5時から10時で、入居者間で調整を行いながら、入浴の順番、時間を決めます。就寝に介助を要する場合は、10時30分までに介助を終わらせるように考えて介助を頼みますが、何時に寝るかは各自が決めます。
また、土曜日と日曜日は本牧ダックが休みなので、実家に戻ったり、友人のところへ泊まりに行ったりする人もいます。
入居者の生活に関することは、役割分担を決めてできる限り自分たちの手で管理しています。現在入居者が担当しているのは献立作り、物品費(共同で使う消耗品など)の会計、お風呂の会計、買物、ボランティアとの連絡や交通費の支払いなどです。

*生活費*

ここでの生活費は、自分で管理するのが原則です。計算ができなかったり、字が書けない人は職員がてつだいますが、お金をどう使うかを決めるのは自分です。どうしても自分で管理するのが難しい場合は、お金の管理を職員に委ねています。お金の動きを確かめ、金銭感覚を身につけていくために皆、家計簿をつけています。一ヵ月の収入と支出は次のようになっています。
収入……生活保護、基礎年金、特別障害者手当、県と市の在宅手当など
支出……家賃(61,500円)、介護料(15,000円〜103,050円)、食費(朝200円、夜500円)
物品費(6,000円)、水道光熱費(10,000円〜15,000円)、エレベーター維持費(ふれあい生活の家のみ 11,000円)等

*体験入居*

「一人で生きてみたい」「親から独立したい」と思っている障害者はたくさんいます。しかし生活体験の不足から、その思いを実現するにはどうしたらよいのかわからない、自信がない、そのような人のために体験入居を本牧生活の家で実施しています。体験入居に使う部屋の部屋代を払うため、食費とは別に1泊につき1,000円負担して頂きます。新しいグループホームの入居者は、皆、体験入居を繰り返し、その経験から自分の意志で入居を決めました。

*運 営*

運営は入居者、職員、障害者団体、地域住民団体の代表者で構成する運営委員会が行います。運営に必要な経費は、入居者が家賃、介助料として支払うほか、足りない部分は市からの補助でまかないます。もちろん、一人一人の生活については自分で決め、その結果については自分で責任を負うことを原則とし、運営委員会はタッチしません。


**ふれあい生活の家
〒231 横浜市中区根岸町3-166シャローム根岸内
□ 045-624-1055 FAX 045-624-3010
*交通:JR根岸線根岸駅下車 徒歩5分
または市営バス99,101系統 不動下下車 徒歩1分

**本牧生活の家
〒231 横浜市中区本牧満坂10
□ 045-623-5318 FAX 045-623-5319
*交通:市営バス99,101,105,106系統 本牧1丁目下車、徒歩15分

本牧ダック

本牧ダックへの通所を決めるときは本人が来たいと思っているかどうかを確認して決めます。本牧ダックの通所時間は月曜日から金曜日まで(祭日は除く)の10時から4時までです。ただし障害の状況などにより毎日の通所は困難な人もいますので、細かいことは一人一人話し合って決めます。また一人で通所することができない人は本牧ダックの車で送迎します。
本牧ダックに通所する人は利用料として6000円/月を納入します。
また一日300円で給食サービスを行なっています。
活動内容は、大きく分けて作業、生活力を高めるとりくみ、サークル活動、グループ活動です。
作    業‥‥‥‥‥‥‥七宝焼き、その他
生活力を高めるとりくみ‥‥グループで行うものと個別に行うものがあります
サークル活動‥‥‥‥‥‥‥音楽、生け花、オセロ、機関紙作り
グループ活動‥‥‥‥‥‥‥人形劇、エアロビクス、外出

この他に中区本牧活動ホームで行われる自立生活プログラムやいろいろなクラブ活動、レクレーションなどにも、積極的に参加しています。

*作 業*

七宝焼アクセサリーの製作、販売を行なっています。これらの製品はバザーやお店への委託、記念品等の注文などによって販路を開拓しています。置いて下さるお店をご存じの方、記念品として使っていただけるところをご存じの方、どうかご紹介下さい。
現在作っている製品はキーホルダー、ブローチ、イヤリング等です。これらの売上は材料費を差し引いて、通所者の工賃となります。
ほかに長野県小諸市で障害者を含むグループが作っている手作りみそ(国産大豆使用、低塩甘口)も取り扱っています。どうぞご利用下さい。

*生活力を高めるとりくみ*

一人一人の障害者が地域の中でより自立した生活を送っていくために必要としていることをテーマにして、実践と話し合いの中から生活力を高める取り組みをしています。
たとえば、自分で生活費や作業所で使うお金の管理をするために家計簿をつけたり、銀行の利用の仕方を覚えたり、お金の数え方や電卓の使い方などを学んだりします。買物ができるようになるために、ほとんど買物の経験のない人が生活経験の豊富な障害者や職員と一緒に買物する機会を積み重ねていきます。健康と栄養の管理を身につけること、介助者に作ってもらいたい料理を言えるようになること、道具や料理の選び方によって自分で作れる料理を増やすことなどを目的として自分で料理を作ることもあります。一人一人の必要に応じてトーキングエイドの使い方、ワープロの使い方、電動車イスの練習なども行ないます。
また同じ課題を抱えた人たちがグループで話し合いを進めていくこともあります。自分の体を守るために気をつけること、洋服の選び方、洗濯の仕方について、障害等級、年金などの福祉制度について、介助について、自分の障害について、性についてなど、グループのメンバーによって内容はさまざまです。

*サークル活動*

多くの障害者は生活を楽しむ術を身につけていません。長い人生のなかでこのことは非常に大切な問題です。生き甲斐とするもの、楽しむものがあることで生活のハリも違ってきます。私たちは作業所の枠を超えて趣味を同じくする近くの障害者が集まって行なうサークル活動を作りたいと思っています。
今、本牧ダックでは希望する通所者同士が集まって自分たちで進めていくサークルがいくつかできています。カシオトーンの練習、生け花、オセロ、機関紙作り等です。

*グループ活動*

多くの障害者は自分を表現したり、発散したりする機会が非常に少ないのが現状です。新しい自分を発見したり、作りだしていく試みとして、週1回、人形劇、エアロビクス、外出のグループにわかれて活動しています。

*自立生活プログラム*

中区本牧活動ホームの青年生活学級の一つとして実施されているプログラムです。グループホームでの経験にもとずいて、本牧ダックが担当しています。この地域の作業所で親元をはなれて生活していくことを考え始めている人たち、いろいろなことを自分で経験してみたいと思っている人たちを対象として月1〜2回行われています。

**本牧ダック
横浜市中区本牧町2-363 TEL 045-623-4399 FAX 045-623-1282
*交通:99,101,105,106系統市営バス乗車、小港下車、徒歩1分
根岸線、山手駅下車、徒歩30分


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