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知的障害者福祉研究報告書
平成6年度調査報告  〜精神薄弱者福祉研究報告書〜


第2回「精神薄弱者福祉研究会」資料

委員ヒアリング(まとめ)

渡辺勧持委員 1994年6月6日 ヒアリング記録 1

渡辺 勧持氏(愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所 社会福祉学部 部長)
出席者 (財)日本船舶振興会:高木
      (株)福祉開発研究所:宮森
場 所 愛知県コロニー 発達障害研究所内

1. 現状と課題

?@現状
○知的障害者の地域生活援助について、(日本の)グループホームの流れがあるが(現在1,000ケ所、4,000人の人達が住んでおり、急速に増加していると言える。)、これは日本的援助としての考え方で、欧米のように施設を廃止する考え方から出発しているものではない。
○スウェーデンでは、ほとんどがグループホームに住み一部が自宅で生活している。現在、福祉の先進的な国々では、サービスが施設から在宅へ向かう流れがある。この流れは、それらの国々において30年かかって培われてきたものである。
○わが国においては「町の中で暮らす」という確固とした理念があるわけではなく、施設に対して訴訟が起きることもない。理念が無いことは、逆に言えばそれが無いから「何でもある」社会ができたと言える。

?A今後の流れ(展望)
○全体としての流れは施設から在宅へと向かうであろうし、そうならなければいけないと考えるが、その動きは「ずるずると行く」ものと考える。その推進力には理念が先行していくものではない。しかし、グループホームの例にもあるように、そのスピードが速いことから、普通の人々には理解が追いついていかないこともあり、一般市民に理解を求める必要がある。
○最終的には施設と在宅が平等に扱われるようになろう。そのプロセスとしては、施設から地域化していくことの促進と、在宅サービスの多様化が図られていくことになろう。
○今後は、施設で行うインスティチューション・ベースのリハビリテーションから、地域資源を使ったコミュニティ・ベース・リハビリテーションの考え方が模索されると思う。

?B今後の課題
○知的障害者(児)福祉の課題をどう見るかは、それぞれ置かれている立場によって異なる。
○わが国におけるグループホームの問題として世話人2人、建物への補助、重度手当などの問題があげられ、それらに対する改善が求められる。
○今後は施設を建て替える費用の問題以外にも、地域の中でケアをする人材が作れるか、サービスの質の問題など、多面的な方向から論理を構築する必要がある

2. 地域生活援助に関する専門的な研究機関を作る

○地域生活援助に関する専門的な研究機関を作ることが必要であると考える。各国の資料が散逸している状況もあり、資料センターとしての役割も大切なことであると思う。

3. 地域における福祉の計画、コーディネイト、プログラムを作る専門家の養成

○地域における福祉の青写真を作る仕事、次に全体をコーディネイトする仕事が必要であると考える。そのプログラムと費用を検討し、地域で暮らす計画書づくりを行い、機能を戦略的に生み出していく仕事が求められる。

4. アジアの国々への専門家の派遣

○個人的な興味としては、アジアの国々に対する援助が必要であると感じている。福祉が遅れている国では、逆に普通の子ども達に(障害児)が取り込まれている。また、専門家がいないことで(彼らにとっては)良い環境ができている。これからのあり方に日本が支援できることは大きいと思う。


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