事例 BTCVの活動内容
・1年間に全国の約500ヵ所で実施される1週間単位の保全合宿(ナチュラル・ブレイク)、週末に行なわれる日帰りの保全運動、それに学校の生徒や一般市民に対する教育・啓発活動を展開している。
・会員には半年ごとに、このような活動プログラムの冊子が郵送され、その中から気にいった日にちや日程、作業内容のものを選び、申し込むシステムである。申し込みには6000〜7000円程度の参加費が必要で、これには合宿中の宿泊費(多くが村の集会所のような所)と食費(自炊)が含まれる。
・1プロジェクトの構成人数は原則として12人で、年齢や経験の異なる人びとで一団が編成される。初日の夕方にあらかじめ指定された最寄りの鉄道駅におもむくと、BTCV所有の小型バスに迎えられ、他の参加者とともに今回の宿泊場所に案内された。
・宿泊場所には5階級があり、この事例ではバーマーシュという小村の木造の集会所で、階級は2である。この場合、床にマットを敷いて持参の寝袋を用い、シャワーも近隣の協力民家で借用するという具合である。ただ、どの階級でも食事はBTCV地方スタッフがあらかじめ用意したものを、おのおのが分担自炊する。また、宿泊施設はパブに近い場所が選定されるよう配慮されており、初日の夕食づくりと食後のパブでの歓談により、早くも親交が深まるシステムである。
・起床は午前7時30分ころ、早起きの人が洗面やお茶の準備をしだすことで始まる。朝食はパンとバター、牛乳程度で、起きだした者から各自ですまし、早くすませた者が昼食用のサンドイッチをつくる。一定の活動の時間や決まりはあるが強制することはなく、あくまで参加者の自主性を待つやり方である。8時半過ぎに小型バスで出発し、9時ころに作業現場に到着する。9時〜17時までが作業時間で、途中に約1時間の昼食時間と、午前と午後にそれぞれご10分程度ずつの、お茶の時間があった。
・夕食は質素ではあるが、肉類や果物なども入り、用意されたメニューにしたがって、一日の作業の後の充実感と和気あいあいの雰囲気で自炊する。夕食後には、ほぼ毎日パブに出かけ、夜遅くまで自然保護論、政治談義、人生論、音楽論、はては恋愛論と時間を忘れて歓談し、就寝は12時過ぎになることが多かった。また、合宿の後半に1日の休日があり、弁当をつくって近辺の歴史的な町に遠足に出かけた。さらにレンジャーによる半日の保護地内の案内と解説や、リーダーによる夕食後のスライド会ありと、合宿中にもいくつかのプログラムが用意されていた。
・ところで、私の参加した事例の作業の中心はハシバミ林とクリ林の伐採で、目的は放置された薪炭林の管理サイクルを復活することにより林内に陽光を入れ、多様な野生草花類や昆虫類の生息環境を用意することである。ほかにハシバミの切り株については、若芽がノウサギに食害されないよう、切り枝で保護する作業があり、さらにクリの伐採跡地では、林種転換を目的にハシバミの苗木を植えつける作業があった。
・リーダーにしたがって行なう一連の作業は、おしゃべりをしたり、気ままに歌を歌いながらの自由な雰囲気である。作業の合間に森の中で焚火を囲みながら楽しむ、お茶と懇談のひとときもまた格別である。
資料)石井実、植田邦彦、重松敏則『里山の自然をまもる』1993年、築地書館