第6章 長周期波の観測・解析方法、情報提供のあり方の検討
6.1 長周期波解析方法の概要
ここでは現在港湾技術研究所の全国海洋波浪観測網(ナウファス)の長周期波解折で行われている解析方法を紹介する。
このナウファスによる長周期波の解析フローを図6-1-1に示す。
6.1.1 観測方法
ナウファスにおける波浪観測はサンプリング間隔0.5秒で連続的に観測されている。このうち通常の有義波緒元を計算するための波浪データは、毎偶数時前後10分間のデータを用いて行われるが、長周期波のためのデータ処理を行う場合は、観測された波浪データに長周期の波浪成分のみを通過させる数値フィルターを通し、周期30秒以下の周期成分を濾過し、5秒間隔のデータとして連続的なデータを20分単位で保存する。
6.1.2 解析方法
長周期波の解析を行う際のデータの区切りは、有義波緒元計算で用いる波浪データの時間帯との関係から、正時から正時ではなく、毎偶数時前110分から2時間単位としている。サンプリングが5秒間隔であるため、2時間のデータ数は1440個である。
これらのデータを用いてスペクトル解析により長周期波エネルギーを求める。
この解析手法としては、演算速度の速いFFT法を用いる。FFT法はデータ数を2のベキ乗ととすることにより演算を効率よく行う方法であるが、長周期波のデータ数は1440データであるため、2のベキ乗の最大値として1024データを採用することができるが、そうすると、全データの3割程度が解析されないことになる。そこで、図6-1-2に示すように、1024個のデータを104個ずつずらして、5回の演算を行い、全データを解析に用い、その平均値を用いている。
演算されたスペクトルは、それぞれ、30〜60秒、60〜300秒、300〜600秒および、600秒以上の4個のエネルギーバンド値として台帳に保存される。
6.1.3 数値フィルター
通常の波浪データから長周期波成分を抽出する数値フィルターとしては、FIR型デジタルフィルターと呼ばれるものを採用する。これはフィルター長100のローバスフィルターにハミングウィンドウをかけたものである。
このフィルターによるインパルス応答と周波数応答特性を図6-1-3、6-1-4