第5章 船体動揺に影響を及ばす長周期波成分の把握
ここでは、第3章の長周期波による船体動揺の実態調査および第4章の日本沿岸域の長周期波出現状況の解析結果から、船体動揺に影響を及ばす長周期波成分がどのような周期帯に属するかを検討し、さらに動揺量と長周期波の波高との関係について解析した。
5.1 船体動揺に影響を及ばす長周期波の周期帯の検討
「アンケート・ヒヤリング調査」によれば、港湾のバースに係留された船舶が、うねりや長周期波によって動揺することが発生している港としては次の13港が抽出された。
【日本海側】能代港、新潟西港、富山港
【太平洋側】釧路港、苫小牧(東)港、仙台新港、東電広野港、小名浜港、鹿島港、大分港、細島港、志布志港
これらの港は太平洋側がやや多いものの、特定の海域に偏ったり、集中しているような状況はなく、全国的に万遍なく分布している。従って全国どこの港でも長周期波による船体動揺が発生し得ることを示している。
これらの港は、第4章で検討したナウファスによる日本沿岸域の長周期波の出現状況の解析の対象地点とは、苫小牧港を除いてすべて異なっているため、船体動揺に影響を及ばす長周期波の周期帯について、個々の港で対応を取ることは困難であるが、全体的な傾向としては以下のことが言える。
?苫小牧港は菅沼ら(1995)の調査報告にもあるように、周期数分程度の長周期波が船体動揺の原因であることがわかっている。
?アンケート結果によれば、富山港2号岸壁のローリング(約10秒)、釧路西港第1、2、3埠頭のローリング(約10〜15秒)、鹿島港原油桟橋1号のサージング(10〜12秒)はうねりの周期帯と考えられる。
?新潟西港臨港埠頭のサージング(約50秒)、富山港2号岸壁のサージング(約50秒)、釧路西港第1、2、3号埠頭のサージング(約50〜60秒)、十勝港第3埠頭のサージング(約60秒)などは、周期としては長周期波の周期帯である。
このように船体動揺に影響を与える周期帯としては、動揺の固有周期の相違が関係すると考えられるが、周期10〜15秒のうねりと周期数分程度の長周期波の双方が考えられる。