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の生ずる原因について以下に概説するが、詳細については、文献〔例えば、首藤伸夫:津波研究の現状と津波対策、沿岸海洋研究、第35巻第2号(印刷中)、など]を参考して頂きたい。

誤差の生ずる場所は、(1)初期波形、(2)方程式の選択、(3)方程式や境界条件の差分化、(4)海底地形の測定精度と地形の離散化表示、(5)計算精度検証相手の津波実測値そのもの、の5ケ所である。

初期波形は今の所断層運動に対応する断層パラメタに基づいて得られるが、この過程で2倍近い誤差の発生することがある。

使用する方程式については、通常は本調査でも使用した浅水理論によるのであるが、これで十分と云うわけではない。本年度の調査で取り扱われた宮古湾の例では、湾口周辺と湾奥部とでは既往実績に対する計算結果の傾向が異なる。湾奥部は水深が浅く、津波侵入時に海底洗掘が大規模に生じ、それに費やすエネルギー損失のため津波が小さくなった可能性が強い。現実に、昭和三陸大津波の時、高浜から伸びている砂嘴の付け根が切られるという現象が起きているが、これを現行の浅水理論に反映させるには工夫が必要であり、今回の調査では行う余裕がなかった。そのほか、操船上問題となりうる波状段波に関しても、浅水理論では扱えない。

方程式の差分化についてはかなり研究が進んでおり、本調査では今までの研究成果に従った計算を実行しているので、ここに特に取り上げねばならない問題点はない。

海底地形の精度についても、海の基本図のような基礎資料を使えば、現段階での最善を尽くしていると云えるであろう。地形によっては、地形のもつ屈折効果の精度は空間格子寸法にかなり依存して決まる。この点については十分配慮する必要があり、本調査で用いられている空間格子の大きさについて、もう一度検討する方が良いとの印象を受ける。ただ、必要な地形離散化精度についての議論は未完成であり、よるべき一般的な基準は存在していない。

既往津波の再現計算において、検証材料に使われるのは潮位記録及び津波痕跡である。潮位記録では短周期成分がかなり濾波されているはずであるが、津波当時の検潮井戸の構造が不明のため、この補正を行うことが出来ない。更に、記録紙の時間スケールが小さすぎ、波形の読みとりが不正確となる。計算値との比較に耐えうる記録は、極めて稀である。この欠陥では、本調査でも顕著に表れている。例えば、過去の潮位記録の読み取り値が如何にも不自然な波形を与えている場合のあること、観測井戸周辺の津波痕跡値に比べ潮位記録値がかなり小さい場合のあること、などである。津波痕跡についても、当時の詳細な地形を考慮に入れて、その意味を考え取捨選択する必要があるが、古い津波についてはこれも実行できない。

以上のように、誤差の生ずる箇所が多数あり、本調査もその例外ではない。過去の津波の再現計算においては、相田の指標である幾何平均K、幾何分散κを使って計算精度を評価してある。この指標を参考に、計算値の補正を行って実態に近づける努力をしなくてはならない。想定津波に対する計算においては、再現計算で生じた分散を参考に、計算結果に幅を持たせて判断する必要がある。こうした点では、今少し改良の余地が残されている。

どのような形で最終出力をまとめるかについては、現地の港湾管理者が何を必要とするか、既往の船舶・漁船・港湾・漁港災害ではどのような形態があったか、の調査を行い、その結果に基づくことが望ましい。判り易く、使い易く、しかも計算精度の幅も考慮した形で、まとめるような工夫が必要である。

(委員長:首藤)

 

 

 

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