第4章 まとめ、今後の課題
4.1 まとめ
今年度はモデル港湾として宮古、釜石、大船渡港、対象津波として昭和三陸地震津波を設定し、断層モデルを2つ仮定して数値計算を行うことにより、津波高分布、検潮儀での津波波高時系列との比較によるモデルの検証を行った。
宮古港においては、特に湾奥での計算値が実測値を上回る傾向が見られた。この原因として、湾奥部の水深が浅く、津波が侵入した時に海底が洗掘が大規模に発生し、エネルギー損失が生じて津波が小さくなった可能性があり、現在の計算モデルにこのような現象を反映させるのに、工夫が必要であると思われる。
釜石港では、計算津波高の計算値は実測値の2倍程度となっている。これは、港湾によっては波源パラメータから求められる計算結果に対して2倍程度の幅を持たせて判断する必要のあることを示唆している。
大船渡港では、計算津波高の計算値と実測値はほぼ等しく、ばらつきも少なくなっている。
三陸沿岸での検潮記録と計算波高時系列の比較では、津波の到達時間が検潮記録に対して5分〜13分前後するが、波形については計算結果がより短周期成分を含むものの、八戸、月浜、花淵、塩釜では良い一致を見せている。水位については、鮎川では計算波高が実際の4倍近くになる他は1〜2倍の範囲にあり、比較的良い一致を見せている。検潮儀周辺での津波高と比較すると、鮎川での波高の大きな差は、検潮儀の応答特性による検潮記録の波高の低下による影響も原因として考えられる。
今後の課題としては、他の港湾を対象として、当モデルの津波高、流速等の再現性を見積り、計算精度の幅を考察すると共に、港湾への当モデルの実際的適用方法を考察することが挙げられる。