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2.3 モデル港湾及び津波の設定

 

2.3.1 モデル港湾及び津波の設定

計算プログラムの妥当性を検討するため、モデルとなる港湾を設定する。モデル港湾は宮古、釜石、大船渡の3港とした。また、対象とする津波として、近年の津波のうちで三陸沿岸広範囲に被害を及ぼした、昭和8年三陸地震津波を設定した。

 

2.3.2 昭和8年三陸津波

開発したモデルによる計算と実際の津波を比較するために、対象津波に関する資料を収集・整理した。

なお、津波の高さについては種々の呼び方があるが、ここでは「海洋観測指針」(日本気象協会、1985)の定義を基に、津波継続期間中における最高潮位を「津波高」という呼び方で統一した。よって、現地踏査によるこん跡調査結果は津波高を測っていることとなる。一方、津波によるある時刻、もしくは時系列としての海面変動を論ずる場合は、「津波水位」、「水位」という呼び方をした。また、津波の谷から山までの高さについては「波高」という呼び方をした。

 

(1) 記録

 

1) 概要

昭和8年(1933年)3月3日2時30分、岩手県沖(北緯39°14'、東経144.31°)を震源とする、マグニチュード8.1の地震が発生した。地震による被害は少なく、三陸地方で壁の亀裂、崖崩れ、石垣・堤防の決壊があった程度であったが、地震後約30分から1時間の間に津波が北海道・三陸の沿岸を遅い大きな被害が出た。

この地震による各地の震度を図2-3-1に示す。

 

2) 沿岸での津波高

沿岸での津波高分布を図2-3-2に示す。北海道では、襟裳岬周辺で4m以上の高さになっているが、他は2m内外の所がほとんどである。

これに対して岩手県の沿岸では津波の高さは10m以上にも及び、とくに綾里湾では28.7mにも達した。県別の被害でも、岩手県が最も多く、たとえば、田老村田老では人口1,798人のうち、死者763、傷者118、戸数362のところ、358軒が流出し全滅といってよいほどの被害を受けた。また、その北の小本村小本でも戸数145のうち流出77、人口792のうち死者118もあった。最大波となった白浜では戸数42のうち32が流出し、死者66となった。

 

 

 

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