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(2) 西尾北海道教育大学教授

流氷に関する研究者として、北海道教育大学の西尾教授に面接によりヒアリングを行い、以下のようなコメントを得た。西尾教授は、サロマ湖を対象としてマイクロ波センサによる流氷のリモートセンシングの基礎調査などを実施している。

? 海面と流氷の判読可能性について

ERS-1/2、RADARSATのようなCバンドSARの場合、風速が大きく風浪や波高が高い状態では海面からの散乱が大きくなり、開水面と流氷の分離が難しくなる。目安としては風速10m/s以上で判読が難しくなる。一方、JERS-1のLバンドSARではこのような影響は小さく、判読可能性が高くなる。

? JERS-1による海面と流氷の分離

JERS-1のLバンドSARでは単に後方散乱係数の大小で流氷と海面の分離が可能である(オホーツク海で多くの研究例あり)。

? 画像に見える特徴の判読

・ 黒い氷板について

可能性1: 海水を含んで濡れている氷板。薄い氷板の上に積雪がある場合に、積雪の重みで沈下しブラインチャンネルから海水が上昇し表面が湿っている、もしくは濡れている。そして積雪と流氷との境界には高濃度の塩分層が形成されることが多い。この場合、表面の粗度が低下するとともに水分および塩分によって後方散乱係数が低下するために黒く見える。

可能性2: この海域でできた薄い新生海氷板。表面の粗度が低いために黒く見える。

・ 白い氷板について

規模の大きな氷板であり、表面粗度も大きいと思われる。氷厚も厚い(30〜70?)。アムール川付近からの流氷と考えられる。

・ 氷塊の風下側の墨流しのような模様について

小さな流氷が風に流されている可能性が高い。現場で凍ったグリースアイスが塊になっている可能性もあるが、時期から言って考えにくい。

・ 知床半島東側のグレーの海域について

黒っぽい部分は山によって風が遮られている領域、グレーの部分は海面で風浪が強い散乱を起こしている。南東海域は流氷と考えられる。

・ 氷塊の間の黒っぽい部分について

氷塊の間のやや黒っぽい部分はグリースアイス(又は小さな海氷の塊)というよりは開水面と思われる。

? 後方散乱係数から氷厚への変換

サロマ湖を対象とした実験では、後方散乱係数と氷厚との間に負の相関があることが示された。これは、外気温が水温より低い場合、氷厚が増加すると表面温度が低下し、それに伴って誘電率が小さくなり後方散乱係数が低下するためと推定されている。ただし、ERS-1/SARでは傾向がよく見られたが、JERS-1/SARでははっきりとした結果は得られな

 

 

 

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