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2.3 通貨危機と今後の見通し

 

通貨危機で生じた財政難を乗り切る為、政府は1997年末に政府・各省庁の98年度の支出の25%削減を促す行政令を施行したが、1998年に入りこの削減率を40%に引き上げる通達が出状された。同令によれば、組織の新設・拡大、機械・備品の新規購入などが当面の間禁止されるほか大型インフラプロジェクトなどの実施も延期される見込みである。(但し、援助条件は除く)

更に、政府は緊急の場合に対応出来るようIMF、世銀、ADB等に短期クレジットの供与を要請・交渉中であり今後の成り行きが注目される。

また、フィリピン銀行協会に対し『一定期間の返済猶予等を認める様に』との異例の通達を出し、ペソ安に伴う外貨建て債務の膨張、銀行の貸し渋りなどに伴う資金ショートで債務超過は陥った中小企業を救済する方針である。

大企業については現在のところ倒産等の実例はほとんど発生していないが、通貨危機を乗り切る為、既に進行中のプロジェクトおよび契約締結済のプロジェクト以外は状況が鎮静化するまでの間、新規計画を延期としている企業もある。

いずれにせよ通貨危機問題はフィリピン国内の問題にとどまらず、世界経済に関わる問題であり、1998年5月に予定されている大統領選挙の結果にも大きな影響をおよばす事は必死であり、今後も注意深く見守っていく必要がある。

 

2.4 日本との関係

 

日本と同国とは近隣国として長年にわたり良好な関係を持ち、特に貿易や直接投資で米国と並び緊密な経済関係を維持している。一次産品の輸出に支えられ1980年代までは黒字基調であった対日貿易収支は1990年代に入り、認可額の7割前後を占めるまでに増加した日本からの直接投資で、資本財・中間財の輸入も増加、赤字が拡大しつつある。日本は同国を最重点国と位置づけて経済再建を支援しており、近年日本からのODAは絶対額では減少しているものの、同国受入れ額全体の約5割と最大シェアを占めている。

 

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