2.4 バイオレメディエーション
(1)研究開発・実用化状況
1974年に流出油対策の研究を開始、1978年に海岸線、海上のバイオレメディエーション研究を開始したが、海上では効果が少ないことから海岸を対象としている。フランスでは、海岸のバイオレメディエーションを実用化させていない(ただし、Inipol EAP22の適用は暫定的に許可されている)。
また、予め油の漂着予想地域に散布して油の付着を予防するプロテクト剤を現在開発中である(写真2-1参照)。このプロテクト剤を散布することにより、これまで海岸に付着した油を高圧水等で洗浄し、生態系に影響を与えていたと考えられるが、低圧の水や波のエネルギーで付着した油が剥離するため、生態系への影響が少なくなると考えられる。
さらに、地下水、土壌汚染のバイオレメディエーションは実用化されている。
(2)栄養塩の開発
?研究の結果、溶存酸素や微生物は問題ではなく、栄養塩のみが制約事項と考えられ、栄養塩の開発を開始、微生物にいかに栄養塩を供給するかという視点から親油性の栄養塩Inipol EAP22を完成した(写真2-2参照)。この商品は、アラスカで実用に供されており、US-EPAの評価でも効果があると判定されている。
?Inipol EAP22に次ぐ新商品開発を行っているが、今のところInipol EAP22がベストの商品である。バイオレメディエーションを行う場合、近似した条件下でもうまくいく場合といかない場合がある。従って、プレテストを行ってから適用する必要がある。また、Inipol EAP22の適用に当たっては、技術的ノウハウがあるため、elf社の支援(テクニカルアシスタンス)をこう方がよい。
?理論的には油の90〜95%を分解できる。ただし、油種、原油の浸透度合い、栄養塩の到達度に左右される。バイオレメディエーションは自然浄化に対して2〜3倍速く浄化することが可能である。
?海岸に厚く油膜がある場合は、まず、物理的処理(ポンプ、スチーム処理等)を行い、次に補助的な手段としてバイオレメディエーションを考えるべきである。また、最初に拡散剤をまいて次にバイオレメディエーションを行っても効果がある。
?流出後、1〜2日後に栄養塩を散布するのが効果的である。栄養塩は、少なくとも2回(15〜20日間隔)は、まく方が効果的である。油の10%程度の栄養塩をまくのが適当である。