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4.2.2 プロトコール開発

 

(1)US-EPAのプロトコールづくりの流れ

マニュアルは、1992年2月の段階で原案ができていた。このプロトコールの意図は1)油流出対応にバイオレメディエーションを使う際の科学的情報の提供、2)1で得られたデータを用いて、バイオレメディエーション広範な適用、商業化の援助をする。このマニュアルでは、バイオレメディエーション商品開発元が示すべき効果と安全性の証明基準であるTiersと、そのための実験方法を扱っている。

Base TierとTier 1、Tier 2は完成しているが、Tier 2に関しては調査結果に基づき修正が行われた。Tier 3は現在評価中である。Tier 4は構想中。

 

(2)プロトコールづくりとバイオレメディエーション研究の流れ

微生物による炭化水素の生分解は数十年間観察されてきた。油分解微生物が油流出にともない増殖することや、微生物製剤を用いた実験などが研究されてきた。

研究初期段階にバイオレメディエーションが生分解促進効果を持つことは確認され、US-EPAの全米不測事態計画(NCP)の製品帳簿に70年代半ばから掲載されてきた。しかし、この段階では、バイオレメディエーションは油流出浄化に一般的に用いられることはなかった。

これは、効果と安全性に関するデータが不足していたためであり、また、商品効果と環境安全性、商品使用法を示す標準評価方法がなかったためであった。商品開発元から提供されたデータは少なく、従来の機械的浄化法に打ち勝つという証拠が不足していた。

しかし、1989年3月24日のエクソン・ヴァルデス号事件後に、油量の多さや生態系の多様性から機械的浄化が難しかったことから、バイオレメディエーションの使用に注目が集まった。

事故後3カ月以内にUS-EPAとエクソンは、実験的にSnug HarborとPassage Coveで親油性栄養塩の使用を始めた。この結果、現地の微生物がアラスカ・ノーススロープ原油の分解を進めていることがわかった。

このテストの結果が出ると、US-EPAやその他の政府機関、エクソンのもとに、世界中の商品開発元から、実験で使用された栄養塩よりも自社商品の方が効果が高いとする申し出が殺到した。商品の優劣をはかる標準化された評価方法がなかったために、ここで集まった商品を公正に評価することができなかった。US-EPAの栄養塩テストでは、他種のバイオレメディエーション商品、使用方法との比較が必要とされたため、別の実験が用意されることになった。

US-EPAの研究開発課(ORD)とNETACはバイオレメディエーシヨンの商業化には比較可能な経験に基づく基準の開発が必要であるとした。ここでの論点は、「US-EPAが使用した栄養塩と他の栄養塩の違いはなにか?生分解率を自然状態より促進するのか?」ということであった。このどちらかがイエスであれば、「使用するコストはどうか?」が問われた。

NETACは1989年12月18日から21日に、商品の効果と安全性の基本的な条件を

 

 

 

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