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1.初期の流出事故と諸実験

 

1.1スピッツベルゲン(ノルウェー、北極海にある諸島)

 

(1)1976年の先駆的実験[1,2]

小量のforcados原油をSpitsbergen海岸線に実験的に流出し、微生物の反応を観察した。2年間放置した風化油に、農業用栄養塩をまいたところ、無使用の場合の10倍の分解がみられた。Forcados原油流出への微生物の反応が観測された。

 

(2)1980年Sendstadのフィールド実験[3]

a. 実験の概要

スピッツベルゲン海岸において、フォルカドス原油を2つの10?のプロットに10L/?ずつ流入し、一方はコントロールとしてなにも加えず、もう一方には市場に出ている栄養塩を0.1kg/?濃度で使用した。栄養塩が調査中に何度使用されたかあきらかでない。第3のプロットは、油を流入させず、平時の土壌の状態を比較した。

b. 結果

油のみのプロットでは、油なしのプロットと比べて呼吸率がやや減少していた。が、油と栄養塩のプロットでは、他の2プロットよりも呼吸率は大きく増加していた。調査者はこれを栄養塩による効果とした。また、栄養塩使用のプロットの累積炭素放出量(cumulative carbon release)は、油のみのプロットよりずっと大きかった。総油消失量でみると、10L/?からスタートして、油のみのプロットで430g/?、栄養塩使用のプロットで320g/?残存していた。Sendstadは、この違いを栄養塩によるものとし、このデータより、油分解率55-96g/?/年を計算した。

反省点としては、推論統計(inferential statistics)が使われたかどうか明らかでないが、この実験は2つのミスが明らかである。?コントロールが不適当である、?unreplicatedプロットを使用している点である。

このケースでは、コントロールにはなにも使用されず、コントロールのプロットは栄養塩のプロット同様の処理がなされたとは言えない(つまり、栄養塩を含まない海水を流入するなどの処理が必要)。

 

(3)1983年Halmoのスピッツベルゲン海岸線のフィールド実験[2,3]

a. 実験の概要

海浜の高潮線の上にあたる地域で、海水と乳化したStatfjord原油の分解を調べた。実験的に流出した油にInipol EAP22を初めて使用した。

Supralittoral zone(平時の高潮線の上部)に3つのプロットを設定した。プロットはdeveloped vegetation(植物成長)を含み、波や潮でときどき洗われた。乳化させた油20L/?が3つのプロットに流入され、第一のプロットはウレ

 

 

 

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