3.4.5 栄養塩の投入方法による効果
(1)目的
3.4.2及び3.4.3では数種の窒素源を一括投入する試験を実施した。その結果、添加時の窒素源種による分解率への影響は大差なかった。
そこで、窒素源を培養途中に間欠的に投入する試験を行い、最終分解率への影響を把握することを狙いに試験を実施した。
(2)試験方法
試験は全自動BOD分析装置を用いて呼吸速度を測定することにより行った。リン及び鉄を十分量強化し、100mMのHEPESにてpH7.8に緩衝した人工海水培地94mLに、加熱風化原油を培地中初期濃度2,000ppmになるように添加する。培養ビン3本には13,200ppmの硝酸態窒素原液を、他の3本には3,300ppmの1/4硝酸態窒素原液をそれぞれ1mLづつ添加し、原油分解菌前培養液5mLを植菌する。
従って、それぞれの培養ビン中の培地中窒素濃度は、132ppmならびに33ppmである。準備した培養ビンは20℃で連続撹拌(150rpm)しながら培養する。培養過程において、一週間毎に前者には滅菌純水を、後者には1/4硝酸態窒素原液を1mLづつ添加する。試験条件を表3-4-5に示す。
培養中は、酸素消費量を常時モニタリングする。培養終了後は、クロロホルムにて残留油分を抽出し(2回)、溶媒除去後秤量分析に供する。
(3)試験結果
この試験は、栄養塩の投入方法として一括投入した場合と間欠投入した場合の分解率への影響を全自動BOD測定装置を用いて、呼吸速度を測定することにより把握した。試験結果を図3-4-18に示す。図の縦軸に酸素呼吸量から算出した呼吸速度の2時間平均値をプロットしたが、これから明らかなように、栄養塩を一括投入した場合と間欠投入した場合との差は明らかにならなかった。
これは、一括投入時の濃度(132ppm)及び間欠投入時の1回の窒素投入濃度(33.2ppm)が高すぎたため、栄養塩濃度が十分すぎて両者の間の差が明確にならなかったのではないかと思われる。
なお、図において、1週間おきに小さなピークが出現しているのは、試験培養ビンに滅菌純水及び窒素源を投与するためにキャップを一時開放したことによるものと思われる。また、いずれの投入方法においても最大呼吸活性は培養開始直後の早い時期にのみ観察された。