3.3 油の付着・浸透状況確認
3.3.1 目的
本研究の対象物は海洋環境に流出後、海岸に漂着した原油である。海浜に漂着した原油は、波や潮汐の影響を受けながらその一部が海岸に残留し、一部は海浜の性状によって表面下に浸透していくものと考えられる。一方、砂礫層内の水相ではほとんど曝気効果を期待することができないため、浸透した油の(好気的な)分解反応は、溶存酸素不足による阻害が顕著になると予想される。これは、例えば20℃の海水中の飽和溶存酸素濃度は約7ppmであるが、干潮位から6時間を要して潮が満ちてくる状態を単純化すれば、水相lL当たり平均1mg-02/L/Hr程度の酸素消費速度しか維持できないことを意味している。
砂礫の層内への油の浸透には、粘度や表面張力等の原油の物性、表面粗度、充填密度、粒径分布等の海浜の物性、そして波の強弱等の物理的な要因が主な影響因子と考えられるが、実際に油が干満につれて、どの様に砂などの層に浸透していくかに関する知見は非常に少ない。そこで、限定した条件の下で油の浸透状況を検討する。本試験では、鉛直方向の水面の移動のみであるので、波の影響が全くない状態での油の浸透を検討することになる。
3.3.2 試験(その1)
(1)方法
a. 装置および原油
試験は内径40mm、長さ500mmのPVCカラムに、粒径2〜8mmの砂利を充填したものを用いる(写真3-3-1、3-3-2)。本カラムに砂利表面を基準として+100mm/-500mmの天然海水による干満を導入し、所定期間毎(0、1、2、5、10、14日目)にカラムを1本づつ取り外し、表面から所定の厚さ(3cm)毎の砂利に付着している原油を溶媒抽出し、重量を秤量する。抽出のための溶媒はクロロホルムとし、ソックスレー抽出器にて原油の抽出を行う。なお、カラム内の砂利試料は干潮時に取り出すものとする。
試験には、加熱風化原油を使用する。
付着・浸透実験装置の諸元を表3-3-1に示した。
b. 抽出方法
カラムから表3-3-2に示す条件で切り出した砂利をクロロホルム-ソックスレー抽出器にて一昼夜還流を行い、ついでロータリーエバポレークにて溶媒を除去し、残留油重量を秤量する。