1. 「生物多様性の現況から評価した埼玉県の保全上重要な地域図」の作成
1-1. コアエリアの定義
埼玉県において、生物多様性の維持にとって重要と判断される区域が50ha以上にわたり分布するところを「自然環境の核となる区域」すなわちコアエリアと定義する。
「自然と共生する環境をめざして」(埼玉県自然環境創造研究会,1992)によれば、「核(コア)」は数十ヘクタール規模以上の面積が必要であることが示されており、また高次消費者であるタカ類の生息・繁殖が認められる最小面積も数十ヘクタール規模(たとえばサシバーつがいを支える広さは約50ha)であることから、ここではコアエリア候補地のうち50ha以上のまとまった面積を有する区域をコアエリアとして採用する。なお50haに満たないものは生態的拠点に含めることとする。
ここで、上記の定義に従い全県を同一の基準で評価を行うと、県の西部地域に重要地域が集中する。国レベルの大きな範囲を対象とするのであればこれで十分にネットワーク論の展開が可能であるが、県レベルとしては低地帯へのネットワークが困難となるため馴染まない。そこで今回は、便宜上生きものの生息状況がまとまりをもって変化する地帯区分に着目し、亜高山帯、山地帯、低山帯、台地・丘陵帯、低地帯の5つの地帯ごとに基準を設け、コアエリアを選定することとした。