日本財団 図書館


曲線は送信機と衛星との距離の変化をするので,そのデータ処理で送信機の地上の位置が決定できる。

このCOSPAS/SARSATシステムは,前述のように二つのシステムからなるが,前者の121.5/243MHzのシステムでは,通信衛星のように単に地上からの信号を衛星中継するだけであるので次の欠点がある。?その有効範囲はEPIRBと地上局とが同じ衛星を見て,ある時間連続的に受信できる範囲に限定されること。?既存の安価な送信機を使用しているので周波数の安定度が十分でなく,そのため測位位置の精度が悪く,軌道の両側に位置が出る恐れがあること。?EPIRBの識別ができないこと。ただし,これらは,すでに海空で千数百人を救助しているという実績をもっている。

これに対して後者の406MHzのシステムは,衛星上で受信周波数の測定をして,EPIRBの識別符号などの送信内容を衛星上で記憶し,繰返してそれを放送するのですべての地上局はそのカバレージに関係なく,衛星が回ってくれば全世界の遭難情報のすべてを受信でき,EPIRBも新しい規格で作られるので, 測位精度も5kmと良く,識別符号などのデータの送信も可能である。わが国では406MHzのEPIRBが制度化されている。

GMDSSには直接の関係はないが,間接的に関係のある衛星を利用して測位を行う航法システムに,GPSと呼ばれる全世界的な測位システムがあり,これはアメリカの国防省が開発を進めているが,高精度測位システム(PPS)と標準測位システム(SPS)の二つがあって,後者は全世界の民間に無料で解放されることになっている。このSPSは,50%の測位精度が40m,95%の測位精度が100mである。システムは,軌道傾斜角が55°,軌道半径が約26,500kmの六つの軌道に4衛星ずつ,全部で24の衛星から構成されるシステムで,24衛星の内の3衛星は予備衛星であるとされており,衛星の打上げには時間がかかるので,システムは21〜24で運用されることが保障されている。現在,衛星の打上げが進められており,1993年末には21衛星による運用開始が宣言される予定である。

システムの各衛星は電子時計を搭載しており,利用者は4衛星からの電波(各衛星からの電波はすべて1575.42MHzと共通であるが,それぞれの衛星からの電波はその距離測定用の符号で区別できる)を受信し,受信機でのデータ処理で受信位置の三次元(緯度・経度・高さ)の位置と時間と速度の測定ができる。船舶で二次元の位置の測定でよいときには,3衛星からの電波を受信すればよい。このシステムは位置の測定に時間を必要としないので,毎秒一回の位置の測定と計算

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION