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衛星77を使用するイリジウムと名付けられた(イリジウムの原子番号は77)システムの提案があり,衛星までの距離が大幅に近いので,簡単な通信機の使用が可能となる。

EPIRBによる遭難通信を中継する衛星は極軌道の低高度衛星である。このような衛星のための国際組織COSPAS/SARSATができた契機は船舶よりは,むしろ航空にあった。アメリカには十数万機の個人用の小型機がある。これらを含めて航空機には船舶のEPIRBに相当するものとして,ELT(Emergency Locator Transmitter)がある。このELTは送信周波数が121.5/243MHzで,旅客機が海上に不時着したときに,いかだに持込むような形式のものと,小型機の機体に空中線を取付けておいて,墜落のときの衝撃で送信機のスイッチが自動的に入る形式のものがある。

このELTの周波数では,山間の谷へ不時着したときなどには,その電波が地上局に届かないので,その捜索に多くの努力と時間を必要とした。そこで,衛星を利用して遭難信号を受信し,その位置を測定しようとするシステムを開発することであった。また,アメリカその他2,3の国では,この周波数を船舶のEPIRBにも使用するようになっており,これが1986年7月の海上人命安全条約の二次改正(救命設備関係の改正)の際にEPIRBとして採用された。GMDSSの完全実施までの間,一部の船舶に共存するが,このEPIRBの導入の時点では,衛星でのその信号の受信を意識していたわけではない。

第二として,当時アメリカでは,400MHz帯の電波を使用して,海上の浮標,風船,渡り鳥などの動物に小型の無線機を搭載して,その航跡とデータを測定する衛星システム,ランダム接続測定システム(RAMS)の開発が進められており,その後このシステムはフランスに技術移転され,アルゴス(ARGOS)として運用されている。幸い,ARGOSに近い406MHzで送信電力が5Wを限度とするこの種の機器への周波数の割当てがあるので,新しい開発が進められることになった。

こうして,この二つのシステムは,利用可能な衛星での予備実験の後,アメリカ,カナダとフランスの共同開発のSARSATが決定し,後に旧ソ連も参加して,COSPAS/SARSATとなった。このシステムで,地上の送信機の位置を衛星で測定するには,航行衛星のNNSSの測位原理の逆を使用する。すなわち,衛星は定められた軌道を通って高速で地上の送信機に接近し,その後離れていく。そこで,送信機の送信周波数が一定でも,衛星での受信周波数はいわゆるドップラー効果を受けて,その受信周波数が高くから低い方へと変化をする。この受信周波数の変化

 

 

 

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