標本化定理における入力信号とパルス列との間には,ある制限があり,標本化定理は次のように表現することができる。
「入力信号が周波数f0よりも高い周波数を含まない信号(帯域制限された信号)である場合,繰返し周波数が2 f0よりも大きいパルス列で標本化を行えば,そのパルス列から原信号を再生できる」
たとえば,図3・56で表されるような関数g(t)が周波数f0以下に帯域制限されているならば,1/2 f0秒おきの離散的な時点における関数の値(標本値)が与えられると,関数g(t)は一つに決まってしまうことをこれは意味している。同図(a)において・印で示したのが標本値である。
標本点の間隔は1/2 f0秒であり,これより長い間隔では標本化できない。この間隔をナイキスト間隔(Nyquist Interval)と呼ぶ。
この標本点を通る曲線はいくらでも描けるようにみえるが,勝手に描いた曲線はすべてf0以上の周波数成分を含んでおり,周波数成分がf0以下に制限されているという条件下では一つしかないのである。たとえば,lkHzの正弦波を考えると,標本点は1/2,000秒おきにとればよいことになるが,この標本点を通る曲線を任意に描くと,図3・56は(c)のように,明らかにlkHz以上の成分があることがわかる。