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2.1.2 センシティビティ・マップの誕生

 

センシティビティ・マップ開発の歴史は、今から約20年前に北米で行われたカナダ政府による資源センシティビティ・マップ開発プロジェクトに端を発する。

1975年カナダ政府は、アラスカ州バルディーズからワシントン州に至る太平洋沿岸海域に、米国によるアラスカ原油輸送のためのオイルタンカールートが開設されることを契機として、環境庁主導による資源センシティビティ・マップ作成プロジェクトを発足させた。

このプロジェクトの目的は、米国のタンカールートとなるブリティッシュ・コロンビア川沿岸域における流出油事故への対応手段の一つとして、関連情報の正確な収集を事前に行っておくこと及び緊急油流出対応計画の策定に際して必要な資料を提供することにあった。

このプロジェクトの結果、沿岸域の土地利用、海象・気象の状況、海岸線の形態、生物相及び緊急時の連絡手段などに関する情報を網羅した地図が世界で初めて作成され、油汚染に対する沿岸域の脆弱性などをあらかじめ明確にしておくことが、流出油事故に対処する上での有効な手段の一つであることが認められた。

その後、カナダ政府は油及び化学物質の流出事故対策の一環として、センシティビテイ・マップの整備・普及事業を、特に流出油事故発生の危険度が高いエリアを対象に展開し現在に至る。

米国では1976年、サウス・カロライナ州の首都コロンビアに本社を持つ民間の研究機関RPI社 (Research Planning Institute,Inc.)が、流出油事故の事例分析に関する調査研究を通じて得た、「海岸に漂着した油の除去作業の難易度はその海岸の汀線形態によって大きく影響される」という理論を基に、汀線の油に対する脆弱性を相対的にランクづけして地図上に表すという手法を発表した。

RPI社はその後検討を加え、同じ地図上に野生動物などの生物資源及び人間による海岸の利用状況に関する情報など、流出油に対して脆弱な指標に関する情報を加えるなどとした上で、 1979年テキサス州沿岸域を対象とした試作図を完成させた。

ESマップ(Environmental Sensitivity Index Map)と呼ばれるこの情報図は、同年テキサス州沿岸のメキシコ湾内で発生した油田の暴噴による大規模流出油事故の際に、流出油の漂着が予想される沿岸域の環境影響を検討し、防除計画を策定する際の資料として利用されたことがきっかけとなり、全米の防災関係者がその有効性を認識することとなった。

さらにRPI社は、ESマップの有効性に着目した米国海洋・大気庁(NOAA)による資金援助を受け、科学的な根拠に基づきその作成マニュアルを開発し、米国のセンシティビティ・マップの標準マニュアルとして政府の承認を得た。その後、米国ではNO

 

 

 

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