2.来島海峡潮流観測結果
1計測の目的および計測の概要
来島海峡の潮流の3次元分布を明らかにするために、運輸省船舶技術研究所が弓削商船高等専門学校の協力の下に、潮流の立体分布調査を行った。
使用船舶および機器は、次の通りであった。
(1)使用船舶:弓削商船高等専門学校練習船弓削丸
(2)潮流センサ:RD Instruments、
Direct Reading Broadband Acoustic Doppler Current Profiler
(3)測位・船速:DGPS
計測日は1997年8月26日および27日の両日であり、中水道・西水道をそれぞれ航行し、鉛直方向の各深度における潮流の流向・流速を計測した。
2.計測結果
調査結果の抜粋を図1および図2に示す。各図は、海面を斜め上方から見た鳥瞰図で示している。各図のタイトルは日付を表しており、海面上に点線で海岸線を実線で弓削丸の航跡を表示し、その下方に潮流ベクトルの垂直分布を200秒間の移動距離を表す線分で表している。
右上の枠内には、図の中心にある点での時刻、緯度、経度と、そこでの各水深毎に、水深(m)、流速(cm/sec)、方位(度)、潮流の鉛直成分(cm/sec、+;上向き、-;下向き)を数値で示している。潮流の値は、10数秒間のデータから統計的に推定したものである。
3.船舶技術研究所による所見
観測時の潮流は小潮であったが、観測結果から、中水道の南側、西水道の北側小島の北東等で、急激な潮流の水平分布の変化が観測され、従来からの渦や湧昇流の存在についての知見を検証することができた。来島海峡航路の東側および西側の南よりのコースをとった場合の観測データから、部分的に水深の小さな領域が観測され、潮流もこれに沿って、上昇、下降していることがわかった。
今後、同種の観測を強潮流の条件で引き続き行う予定である。