参考資料
1潮流影響に関する実船実験
1.実験の目的
潮流の強い狭水道を航行している船がどのような潮流影響を受け、どのように運動をしているかについて計測し、その程度を把握することは狭水路における航行の安全性を考える上で基本的に重要である。
最近、人工衛星を用いた測位システムであるGPSの中で、固定した基準局を置き、誤差の補正を行うとともに、搬送波の位相を測り、測定精度を向上させるというリアルタイムキネマティックディファレンシャルGPS(以下、RTKと呼ぶ)という手法が開発され、その高精度が色々と紹介されている。
ここでRTKを用いて船体の対地運動を計測することが可能であることから、以下の考え方に基いて潮流の影響(横方向の力と回頭モーメント)を把握することが可能であると考えた。RTKを用いた潮流影響を把握するための基本的な考え方を示す(図1-1)。
(1)RTKによる測位精度の検定
RTKの基本的な性能を確認するために、固定点での測位精度と移動点(実船上)での測位精度を検定した。
(2)無潮流下での対水の船体運動(横方向の力と回頭モーメント)の把握
無期流下での対水の船体運動を表すモデルを構築する。このモデルは多項式の形式で、対水速力と回頭角速度に対応した船体横方向の力と回頭モーメントをそれぞれ表現するものである。ただし、船種や船型によって対水速力・回頭角速度に対応する船体横方向の力・国頭モーメントの大きさは異なる。この違いはモデル式における係数(操縦微係数)によって表すものとする。すなわち、個々の船体ごとに操縦微係数が存在することになる。操縦微係数は外力(潮流等)が働かない状況下での船体運動の解析から求めることができる。
操縦微係数が特定できれば(モデル式)、この船体の対水速力と回頭角速度を取得することによって、その時々の横方向の力と回頭モーメントを把握することが可能となる。
(3)潮流下での船体運動の計測
次に潮流下での供試船船体の対地運動を計測する。併せて、船体の対水速力と回頭角速度を取得する。
(4)潮流影響の推定
先に求めたモデル式により、船体の横方向の力と回頭モーメントを求めることができる。しかし、潮流下ではこれらの力・回頭モーメント以外に潮流による力・回頭モーメントが働き、総合的に合成された結果として対地の運動となる。
したがって、対地の船体運動から総合的に合成された横方向の力と回頭モーメントを求め、これらからそれぞれ対水運動に対応する横方向の力と回頭モーメントの成分を差し引けば、潮流による横方向の力と回頭モーメントを得ることができる。