?強潮流が操船に与える影響等
約9ノットの潮流においては、中水道では特に南流時に潮流による圧流の影響が多く現れ、西水道では北流時において蛇行する可能性があることが確認された。
下記の対応1〜3については、互いに関連し、また相反することもあることから、総合的に検討し整理する必要がある。
対応1:適切な速力の確保
潮流のあるところを航行する際には、操縦性を維持するための速力を保つとともに、他の船舶の速力に留意して、接近のし過ぎ、最狭部での並航、前路を塞ぐといったことを避けるよう、適切な速力の維持・確保が必要である。
確保すべき速力の具体的な数値については今後の課題である。また、関門航路(早鞆瀬戸)のごとく、確保すべき速力の基準を設定することを含めて検討する必要がある。
対応2:水道内の追越しの制限
強潮流下で狭い水道を通航する状況においては、操船者は船体の制御に集中できることが望ましく、また、万一圧流される状況となっても、危険なまでに接近する状況に陥らないように、水道内での追越しは避けるのが望ましい。
しかしながら、追越しを制限した場合、船舶が水道内で滞留するおそれがあり、制限が必要な条件・対象船舶、制限をした場合の影響については今後の課題である。
(注)追越しを禁止した場合には定時性が求められているフェリー等に対して別の観点で支障を与えることになると思われる。ここでは航行安全の立場から対応案として提示した。
対応3:船間距離の確保
水道内を追越す場合に生じる危険性と、潮流影響による危険性(速力調整により圧流されたり滞留が生じるおそれ)はトレードオフの関係にあり、双方の危険性は水道内において船舶どうしが近接している状況に起因するものである。適切な時期に適切な船間距離を確保することによって危険性を回避することが可能であると思われる。
適切な時期とは潮流速が小さく、速力を減じても影響が少ない場所を航行している段階を指し、操船シミュレータ実験では、早い段階から速力を減じて船間距離の確保に努め、水道内を航行する際に操船上の負担を軽減することができたケースもあった。
ただし、実験での大型船は水道航行に必要な速力の維持を考慮し減速することを避けた。実験の開始位置は大型船にとって速力調整を行うには水道狭部に近すぎるものであったと考えられる。
このように通峡時の流速に対して必要な対水速力は自船の船型・性能・コンデションによって異なり、かつ速力調整を行える場所も異なるものと考えられる。
船間距離を確保するためには、お互いに前後する同航船の船型や航行速力等を勘案することとなるが、このとき来島マーテスを利用した情報収集が有効であると思われる。
確保すべき船間距離の具体的な数値については今後の課題である。