右側通航における問題点を以下に集約する。
1)中水道・逆潮での航行、西水道・順潮での航行
(中水道)
最大9ノットの強潮流下で、中水道において減速すると南流による圧流が大きくなり他船へ接近する可能性がある。水域も狭いことから逆潮で中水道を航行する状況は困難になると言える。
(西水道)
操船シミュレータ実験では、西水道を南航する際には蛇行してしまう可能性があることが確認されたとともに、馬島に異常接近した例もみられたことから、約9ノットの順潮で屈曲した西水道を航行することは操船上難しいものと判断できる。
2)水道内の追越しの危険性
中水道最狭部での追越しは、水域が制約されていることに加え潮流の影響が大きく(最強流速域)なるため、衝突あるいは乗揚げの危険性が高い。
操船シミュレータ実験(最大流速約9ノット)では、最狭部の南側水域を航行中の大型船が、先行する同航船を最狭部で追い着くことになると予想したため減速してこれを回避した。また、同大型船は馬島方向へ圧流された後、最狭部方向へ向首したものの、潮流により右舷方向へ圧流され、後続の同航船の進路を塞ぐことになった。最狭部を航過した後は右舷(東)への圧流が認められた。最狭部の北側水域でも、状況によっては同航船との接近を招くおそれがあると言える。
したがって、南流(最強)時に中水道を航行する場合は、最狭部は勿論のこと、最狭部南側の水域、北側の水域においても追越しの危険性が高いと言える。
西水道では、操縦シミュレーションにおいて、小島付近での追越しの状況で追越し船が馬島方向へ大きく圧流され乗揚げが発生している。また、操船シミュレータ実験では大型船が蛇行したことにより、後続の同航船との間に見合い関係が発生した例がみられた。
したがって、西水道内では約9ノットの順潮により、自船の航行自体が大きく影響される(蛇行する可能性がある)ため、追越しの状況下では追越し船・被追越し船が相互に接近してしまう危険性が高いと言える。
水道内での追越し制限を想定した海上交通流シミュレーションでは、南流時における中水道では滞留が発生する可能性が高く、流速約4〜5ノットあたりから滞留による操船上の困難感が現れた。
また、逆潮により対地速力が低下するとともに圧流が増大し、他船あるいは陸岸へ接近する危険が生じるものと推察される。
